企業インタビュー

INTERVIEW 06
株式会社トラス 久保田 修司様 代表取締役

久保田様プロフィール

東京工業大学工学部建築学科、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了
大学院在学中にテヘラン大学(イラン)に1年半留学
2008年丸紅株式会社へ入社。水道事業投資に携わる
2014年12月株式会社トラス設立

DXで建設業界に斬り込む、気鋭の注目企業。
「日本の建物に長期的価値を与えたい」

まずは久保田社長のご経歴をお聞かせ下さい。

創業したのは2014年の12月で、今年で8期目です。

元々は総合商社におられたと聞きました。

学生の頃は建築学科で建築史の勉強をしていました。

大学院では藤森照信先生の研究室に所属し、建築設計を学ぶだけではなく、途上国で現在に残る建築物について研究していました。研究のため、イランに約1年半留学する間に、商社をはじめとした色々な企業の方と関わりを持ちました。私はもともと発展途上国が好きなこともあり、国の開発に関わる仕事に就きたいと考えるようになりました。

そして、発電所建設や下水処理等の水道事業に関する仕事をする為に、総合商社に入社しました。

ご入社なさったのは何年でしょう?

2008年です。留学をしていたこともあり、働き始めたのが26歳になってからでした。

入社後は希望通り、真水がない国や地域で海水を飲めるようにする「海水淡水化設備」を建設する部署に入りました。

3年間は、年の半分くらいを中国で過ごしました。幸い事業を順調に展開することができ、中国のパートナー企業も上場を果たすまでになりました。

その後は、ヨーロッパにおける水道事業に携わることになりました。それまでヨーロッパの水道事業は地場事業者がほぼ100%賄っており、EU圏外が付け入る隙がありませんでしたが、欧州危機をきっかけに圏外事業者にも門戸が開かれたため、2011年からイギリスを中心に、ヨーロッパへと進出したのです。

会社員生活は実に順調であったということですね。なぜ、起業して独立するに至ったのでしょうか?

中国のパートナー会社が上場するのを間近で目撃して、そのノウハウも自然と学べる環境にありました。それまでゼロから事業を作るなんて考えたことも無かったのですが、その頃から事業単体ではなく市場全体を俯瞰して見るように意識が変わっていきました。

そんな中でイギリスに移り、それまで途上国の景色を多く見ていたこともあってか、イギリスの美しくまとまりがある街並って、すごいな!と感動しました。
そしてその「すごさ」は、同じ建材が統一して使われているから美しく見えるのではないか?と感じたんです。

そのような経験を得て、日本に戻り東京の街並みを見ると、それぞれの建物に膨大な種類と量の建材が使われていることに気づいたんです。建築現場で働く多くの人たちが、膨大な種類と量の建材をどうやって選んでいるんだろう?「これは大変な作業なではないか?」と思ったんです。

そこで、ある有名なアトリエ系設計事務所の書棚を見せてもらいに行きました。

そこには一冊何百ページもある分厚い紙のカタログが大量に並んでいたのですが、それを「一冊一冊手に取って頁をめくりながら建材を選んでいる」とおしえてもらいました。
しかし、実際にはカタログの情報は一人の設計者が把握できる量を超えており、正確な情報の把握と比較検討に基づいた最適な建材選択は恐らくできていないはずだと思ったのです。

建材を選ぶ時、法律の条件や求める性能のレベル感、デザイン等は、調べる前から大まかなイメージはあるはずです。そこからメーカーを選んで製品を絞り込めるサービスを作れば、世の中で建材選定のために生じている多くの無駄や、労力・費用の削減になるはずだと閃きました。そこにビジネスが成立すると踏んで、起業に至ったというわけです。

置かれた環境の中で次のアクションのヒントをどんどん見つけていかれるのが面白いです。 事業のスタートは順調だったのでしょうか。

会社をスタートした頃は、は、建材メーカーが公開している個社の建材情報データベースを精査したうえで、総合的なデータベースとしてまとめ、メーカー横断で検索できるようにすればいいとシンプルに考えていました。

しかし、実際に大手の建材メーカーを訪ねて建材データの提供をお願いしたところ、そもそもそのようなデータが存在しないということが分かったのです。

どういうことかと言うと、紙の建材カタログそのものがオリジナルで、新製品を追加する時も紙のカタログに赤ペンで手書きで修正し、印刷・デザイン会社が直すという、非常にアナログな作業を繰り返していることが分かったのです。当時、ほとんどのメーカーさんが似たような状況でした。建材のデータベースがあるものと思い込んでいたので、それが無いと分かった時には本当に驚きました。

創業して間もなく、展開しようと構想していたサービスの土台となるはずのデータがそもそも存在しないという、想定外の壁にぶつかってしまいました。そこから我々は、建材カタログに記載されている情報をひとつひとつPCでデータベースに手入力するという途方もなく地道な仕事から始めたんです(笑)。そのため、当初構想していたサービスに、建材メーカーに代わって当社がデータベースを作成するサービスを付帯することになりました。

結果的には、建材メーカーにおいてデータベースが整備されてなくて良かったのかもしれませんね。

そうかもしれません。しかしユーザー目線で考えると、そもそもカタログは無料で手に入るものだし、問い合わせたらメーカーの営業担当者が飛んできてくれていたわけで、そこにわざわざお金を払う価値を見出して頂くのはなかなかハードルの高い話だったんです。横断検索機能をサービスとしてリリースしたものの、これは結構難しい事業かもしれないなと思い始めました。

そんな時に、ある大手のハウスメーカーからお声をかけて頂いたのです。

同社はちょうど2DのCADからBIMに設計ツールを移行しようとしていたタイミングで、BIMモデルに建材情報をインプットして、積算やシミュレーションをできるようにしたいと検討しているところだったのです。しかし、やはりそもそもインプットすべき元データがないため、大変困っていたのです。

我々はその元データの入力や、メーカー毎に異なる単位(例:坪単価と平米単価の違い等)を統一する整理を進めました。その結果、どのメーカーの製品であっても同じフォーマットで統一された基準のデータが出来上がるので、それをBIMにデータ連携できるようなシステムの開発を同社と進めることになりました。そんななか、ある準大手ゼネコンもプロジェクトに加わるかたちになり、開発をすすめたシステムを他社にも販売・展開しているのが現在です。

そのサービスについてもう少し詳しくお聞かせ願えますか?

いま現在、BIM連携に重点を置き、形状情報ではなく、属性情報に特化してシステムとデータベースを整備しています。

メーカー名・製品名・品番や法規の大臣認定の番号等と、製品写真を一括で連携するようなイメージです。

また、これは今後の構想ですが、CO2排出量を材料単位でインプットし、材料を選定すると総排出量が算出されるように開発し、LCA(Life Cycle Assessment:製品やサービスに必要な環境負荷を定量的に表す指標)にも当社のサービスを活用できるようにしていこうと思っています。

設計者の方とコミュニケーションを取って、ニーズを訊いたりする機会もありますか?

あります。それが当社の生命線だと思っています。加えて、我々のサービスが設計だけでなく施工の領域でも使えるようにするのが、今後の注力分野です。

ありがたいことに、ローンチのタイミング等で、日経アーキテクチュア等の建築分野で主要なメディアに当社のサービスを取り上げて頂き、顧客は増えていっています。最近は営業にも尽力し、プロモーションをかけずとも順調に拡大していっていると言えると思います。

施工でも使えるようになる、というのが次の目標だとして、久保田社長はこのビシネスを発展していった暁にどんな世界観を目指しておられるのでしょうか。

長期的な展望としては、建物のクオリティが適切に不動産価値に反映されることを目指したいです

今までの不動産価値というのは、基本的に駅からの距離、広さ、築年数等で判断されていますよね。どんな品質の材料が使用され、どのように施工されたかといった建物の品質を大きく左右する情報は、不動産的な価値としては認識されていないのが現状だと思います。

当社のサービスを通じて、良い品質の建物を作ったら、きちんと価値として評価されるようにしたいです。

冒頭でお話しされていた、ヨーロッパの街並は正にそうですよね。

その通りです。日本の建物はこれまで木材がメインで使われてきました。恐らく、火事や地震といった災害により破壊される前提があるため、長い期間使用される想定ではなかったのだと思います。しかし、建材に関する技術は一昔前と比べると飛躍的に進化しているので、日本でも長期的な価値を建物に持たせるという考えに、そろそろ変わっていってもいいんじゃないかなと個人的に思っているんです。

最後に、貴社が求められる人材についてお聞かせ下さい。

理想はゼネコンで現場監督(施工管理)に就いているものの、「ちょっともう現場はしんどいな」と思っておられるような方に入社して頂いて、活躍頂けたら嬉しいですね。ゼネコン向けの法人営業や、プロダクトの開発に関わって頂く等、過去のご経験を活かせるような仕事に就いて頂けたらいいなと思っています。

これまで携わってきたご自身の業務を俯瞰で見て、色んなアイデアを出し、サービスや当社自体を盛り上げて下さるような方がいいですね。

若手より、中堅くらいの立場である程度色んな業務を見てこられたような方のほうが弊社には合っているかもしれません。

当社のビジョンやサービスに興味を持って頂けたら、是非ご応募下さい。

COMPANY
株式会社トラス
創業
設立 2014年12月
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