企業インタビュー
INTERVIEW05
デザイン性と専門性に長けた設計集団が、大阪トップの設計事務所を目指す。
はじめに、松永様のご経歴をお聞かせください。
最初は京都の設計事務所で、ロードサイド店舗や郵便局、斎場を設計していました。
そのあと、デザイン力をつけるため、マニエラ建築設計事務所に転職し、高級住宅やクリニックの設計を経験しました。一級建築士を取ったのもその頃です。
次第に規模のおおきい物を手掛けたいと思い始めて、組織設計事務所のプランテックに入社しました。
創業者の大江匡さんには、ビジネスと設計事務所は両立できるし、そうやっていかないといけないということを学ばせていただきました。また、ご自身が経営者であることから、お客さんの目線で経営的な建物の善し悪しを判断されていたのが印象的です。
本当にすごい人で、大変影響を受けました。
そのあとにヘッドハンティングのような形でケイ・アイ・エス現会長に誘いを受けて(株)ケイ・アイ・エスに入社。そこで6年間設計部の役員をしていました。
そこからどうやって独立されたのでしょうか?
ケイ・アイ・エスに入社した当初から、「いずれ独立してくれたらいい」と言われてました。
私は当時独立する気はなかったんですが、会長のお考えとしては分社化して、自分たちの道は自分たちで歩んでほしいと思っておられました。
従業員もケイ・アイ・エスから引き継がせてもらいまして、独立当初はケイ・アイ・エスのビルの一階をお借りしてやっていました。
会長は本当にすごいです。本当に懐の深い方。良くしていただいて心から感謝しています。
今もたまにご依頼をくださったり、いい関係を続けさせていただいております。
2015年に株式会社ラフトを創業されました。そのころのお話をお聞かせください。
創業からの3年間は大変な時期でした。
創業当初から今まで赤字は出したことがないので、その頃も利益は出ていたものの、ある不動産会社さんの仕事が一年の売り上げの95%ぐらいを占めていたんです。でも2年目ぐらいから、設計費の滞納が出始めて、どんどんキャッシュが無くなっていきました。
その時もうすでに社員を雇っていたので、自分が死ぬほど仕事するしかない状況でした。寝袋を持って、土日も休まず働き続けました。
何としてでもほかの会社さんからの依頼が欲しい、どうすればいいかと考えたときに、スピードが大切だと思い至ったんです。
いかにスピード感を持って、お客さんにいいプランを提案できるかが重要と考えました。
それを実践していったら、徐々に他方からご依頼ももらえるようになり。苦難を乗り越えられました。
そのあとくらいかな、自社のブランディングについて考えるようになりましたね。
他の設計事務所との差別化について考えられたんですね。
リスク分散のためにも一社に絞らず仕事をするにはどうしたらいいのかを考えました。
そして、ケイ・アイ・エスの設計部門にいた経験から、ゼネコンさんや工務店さんの気持ちが分かるのが最大の強みではないかと気づいたんです。
建設会社は現場監督の頭数が少ないので、いかに効率よく、次の現場に配置できるかというのが勝負。この現場の数で売り上げが決まります。いちばん最悪なのが次の現場が決まってないとか、着工できない理由があって、現場監督が稼働できないとき。
そこで私たちが考えたのが、建設会社さんと一緒に仕事を取りに行くことができますという営業スタイルです。
まず建設会社さんを従業員や売り上げ、設計部門の強さであるとか、そういう観点でセグメントしました。
その上でターゲットに設定したのが、「仕事を取りに行ける設計者が不在」の会社さん。
施工側で受注したものを設計したりする程度の内製化はしているけれど、でも本当は、案件を取りに行く設計がしたいと思っておられるような規模の会社さんです。
今まで入札で取っていたものを、設計段階から取れるようにする。そうすれば必然的に施工会社さんは売り上げが上がります。
発注者さんのところに企画段階から取りに行くことを目的に、施工会社さんと同行営業をしました。
御社が苦手な部分に関して、うちにはそこが得意で優秀な人材がいるから、応援をしますよというスタンスです。最近では、設計者が多くいらっしゃる企業様でも、その企業さんの課題に感じている部分の応援で入ることもあります。
いろんな会社さんで必要とされるフェーズでサービスを提供できるのが弊社の強みです。
企画、基本設計、実施設計、確認申請、監理…さまざまなところで分解できるので、足りないところだけオーダーメイド的にやりますよと。特に弊社では企画のところまでも分解できて、デザインだけ提供するなども可能です。
そのやり方で評価いただいて、結局他のフェーズも任せたいと言われることが多くて、全部やることになるんですが(笑)取っ掛かりはそういう入り方をしています。
お客さんとしてはデベロッパーさん、建設会社さん、コンサル会社さんが多いですね。
設計事務所さんでBtoBに重きを置かれているのは珍しいですね。
大抵の設計事務所はエンドユーザーに目を向けますよね。 当然そこのニーズに応えるのも大事ではあるのですがうちは完全にBtoBなんです。
先に挙げた業種は、ずっと開発や建設、コンサルティングをし続けないと売り上げが立たない。要するに継続してご依頼をいただけます。
リピートいただく中で、お客さんごとの体質やバリューチェーンが明らかになっていくので、ニーズや求める価格に応じたサービスを提供できるわけです。
プロダクトアウトではなくマーケットインでやっているので、お客さんともより良い関係が気づけている、というのも弊社の強みの一つですね。
ラフトさんは今後どのような会社を目指されるのでしょう。
弊社では不動産賃貸業もしていて、会社で不動産を購入していっています。ハイツを一棟買って、今月もさらにもう一棟。ラフトプロパティという不動産専門の別会社を設立する予定です。ビジネスモデルの幅を拡げる意味もありますが、最終的には購入した古い建物を我々設計者の手で再生させて、世の中に返す、ということをやっていきたいと思っているからです。これは普通にただ買って売るより難しいことで、手間がかかる割に収益性的にもリスクが高いので、普通の不動産会社はあまりやりません。
私たち設計者は手間暇かけていい建物を残していきたいという思いが強いので、あえてそこに挑戦します。
そのためには不動産を買える仕組みや体制を持っていないといけなくて、まずは現段階で一番簡単な賃貸アパートを買って試している段階です。財務的なところでも様子を見つつ、2年ぐらい試して、設計の方も順調であれば、本格的に着手していきたいなと思っています。
いずれは商業施設とかもやっていきたいので、会社として今後を見据えながら様々な準備を進めていくつもりです。
大変興味深い取り組みだと思います。それでは、社内的にはどういった組織を目指されますか?
ゆくゆくは従業員数を100人ぐらいの規模にしたいです。設計事務所だと中堅くらいの規模の組織になると思います。
そうなると新卒で入って定年まで安心して働いてもらえる会社になるんじゃないかなと思います。
当初の第一段階の計画は30人くらいの社員数を目指していて、それはもう間もなく達成します。
次のステップで100人を目指すのは、設計事務所にとって「人」というものが非常に重要だからです。
設計事務所はとにかく人。人数が会社のバロメーターにもなるし、収益を上げられる構造になります。
100人規模になったら、一人の力ではなく会社の力で次のステージに上がることができるでしょう。
ラフトは私の代で終わらせる気はないので、後継を考えた時に、設計、デザイン、経営などそれぞれの専門分野に長けた人が運営できる会社でなくてはならないと思います。それが実現可能にするには、やはり社員数100人規模の組織が必要だと思いますね。
100人を目指す中で、御社が求める人物像はどういった方でしょうか。
私が一番大切にしていることは志が近しい人かどうか、ということです。
設計者はいろんなタイプがいますが、情熱のある人が一番だなと思っています。
元京セラ会長の稲盛和夫さんは「能力×考え方×情熱」が仕事や人生そのものになるとおっしゃっています。
一般的に採用は能力を軸にすることが多いですが、能力があっても、考え方や情熱が無いと伸びないと思います。
弊社で重視しているのが情熱と考え方。そこに能力があればいいな、という感じです。
設計者は一番建築を好きでないとダメな人だと思う。
建築のファンで、好きで好きでしょうがないから、愛情を注いだ提案を自ら進んでできるのです。情熱や考え方がないと、せっかく能力があってもダメなほうに行ってしまうこともありますし、能力は伸びる可能性があるが、情熱というのは実は一番難しいところです。
面接の時には必ずどういうことやりたいか聞きます。建築好きな人は具体的にやりたいことが出てきますね。
御社に入社したら、どんなことが実現できるでしょうか?
まずは、いち設計者としての成長を会社として後押していこうというのが大前提としてあります。
先ほどお話した通り、弊社のターゲットの企業さんがいろんな建物を建てているので、用途も幅広く設計しています。なにかに特化したほうが生産性はいいですが、スタッフも色んな用途を経験できることで、やりがいや成長に繋げられます。
それともう一つ、弊社は会社としても成長している段階なので、会社を一緒に作って行ける楽しみがあると思いますね。従来の企業は完成してる環境に入る感覚ですが、弊社では自分達で自分達の環境を作れます。若手からの意見にも耳を傾けて採用しますし、それを実現するために社員と面談する機会を増やしています。
自分が組織や会社を作る感覚でいることで、設計者として言われたものをこなすだけでなく、それらに対して自分で考えて、 プラスアルファこうやったら上手くいくかな?なんてことを考える機会になります。
私は「和気あいあい」という言葉が好きなんですが、社員はその通りコミュニケーションがとれていて、本当に雰囲気がいいです。
相談しあって、色んなことを分かち合いながら皆で頑張っていて、中途入社で入られた方から驚かれるほどです。
仮に業務で壁に当たっても、楽しく乗り越えてほしいですね。
最後に松永様の仕事に対する考え方を教えてください。
ワークライフバランスはもちろん重要なうえで、稲盛和夫さんの「仕事と人生は切り離せない。仕事での喜びが人生の豊かさにつながる」という考え方は私も共感します。
何のために生きて、自分が社会に何を提供するのか考えたときに、遊びでは提供できない。遊びが本気になると仕事になるのだと思っています。
幅広い用途における設計・監理や不動産事業を大阪本社の組織設計事務所。
お客様の事業に推進力を与えるパートナーとしてサービスを提供しています。