企業インタビュー

INTERVIEW06

日本国土開発株式会社 望月 尚幸様 取締役、副社長執行役員、建築事業本部長、安全品質環境本部管掌

望月様プロフィール

1987年4月   清水建設株式会社入社 

2017年4月      同社建築総本部東京支店副支店長 

2019年1月      PwCコンサルティング合同会社入社、シニアマネージャー 

2020年4月     日本国土開発株式会社入社、執行役員建築事業本部副本部長 

2020年8月        取締役常務執行役員建築事業本部長兼東日本事業部長 

2020年10月   取締役常務執行役員建築事業本部長兼生産・物流事業部長 

2021年6月     同社取締役、副社長執行役員、事業部門統括、COO(最高執行責任者)、建築事業本部長 

2022年6月     同社取締役、副社長執行役員、建築事業本部長、安全品質環境本部管掌(現任) 

技術者としての提案・説明が出来なければ、ゼネコンとしての存在価値はない——

現在、望月様は日本国土開発株式会社様の副社長というお立場でいらっしゃいます。
望月様のご経歴について詳しく伺わせてください。
元々新卒でスーパーゼネコンの清水建設にご入社されておられますが、ご担当業務や携わられた施工案件などを教えて頂けますか。

1987年に入社して以降一貫して建築畑でやってきました。37歳で工事長という役職になり、52歳までずっと現場の所長を担っていました。400億円以上の現場など、かなり大規模な案件も複数経験しました。 

具体的には、初めて携わった案件が研究所で、そこを皮切りに超高層オフィス、某製薬会社本社ビル。食品メーカーの研究所など、研究所が多かったです。所長になってからはオフィスビル、総合病院の外来センターや病棟、PFIの中央合同庁舎第8号館の現場所長を経験し、最後は豊洲市場の所長を務めました。水産仲卸売場棟の所長の際は、他の2棟を含めた総合管理も担い、大変でしたが、とてもよい経験となりました。 

その後は、建築部長を1年やり、副支店長を2年経験しました。

基本的には現場で責任あるポジションを締められていた期間が非常に長いということですね。
様々な現場所長の経験を経て、そこで得られた考えや何かお感じになられたところはありますか?

「小さい現場でも所長というのは経営者と一緒だ」とよく感じます。 

お金の面で言えば、大きな物件では、2年間の工事で1000億を管理していましたので、それを考えると、ある程度の会社の規模に匹敵すると思います。 

当然、人に関しても多くの協力会社の方々に関わって頂いていますので、最盛期は、2000名の方が働き、自社の社員でも100名が仕事をしていたので会社さながらです。 

その時の経験が非常に今に活きていると感じていますし、ゼネコンで施工管理を行う醍醐味だと思っています。 

ご経歴に話を戻しますが、スーパーゼネコンで東京の基幹店の副支店長というポジションにまでなられて、お辞めになられた。そのあたりはどんなことをお考えになられていたのでしょうか。

ひとつは、私はBIMを含めた施工図センター、ロボット開発の推進責任者等も行ってきていたのですが、一つの疑問を感じるようになり、どうしてゼネコンは技術開発などを他社と一緒に行わないのかという思いでした。手間とお金をかけてそれぞれの会社で問題解決に取り組んでいますが、結局皆ほぼ同じようなものをつくっているわけです。それであれば協力すればいいのにと思いますし、別々にやるのであれば、他社と違う分野で技術の差別化を図るべきだと思いました。そういった業界全体にある非効率な部分が気になっていました。その点、コンサルであれば、ひとつの会社に縛られることはないですし、外から業務改革を手伝うことも出来るというところに魅力を感じ、転職を致しました。 

コンサルでは、様々な会社に行き、アドバイスや業務改革を行ない、一社にいてはわからない会社の考え方などを肌で感じることが出来、貴重な経験が出来ました。 

スーパーゼネコン、大手コンサル会社を経て、現在の立場になられましたが、経営者として必要な資質やお考えをお聞かせいただけますか。

私は数学的な考えが大事だと思っています。 

仮説を立てて証明する考え方です。 

何かをやろうとする時にその筋道が立たないままに報告してくる人もいますが、それはどういうストーリーの中で青写真を描いているのかと問うと、答えられない方が多くいます。私は必ずこういうことを目指してるからこれをやらなくてはならない、だからこういう風な方法でやる、というストーリーを組み立て遂行することが重要だと思います。人に仕事を頼む際になぜこうするのかを明確に説明しないと人は動きませんし、迷った際も目的がしっかりしていれば応用が利きます。人を動かすためには、その数学的な発想が経営に重要と考えています。 

 

あとは世の中、完璧になるまで走らない人が多くいます。だけどPoC(Proof Of Concept:概念実証)のようにとにかく一回走らせないと何が起こるか分からないからまず走らせ、その上で軌道修正していくことが今の時代重要です。その際も目的と理由がしっかりしていることが重要です。このような考えが今の経営者の考えだと思いますね。 

ありがとうございます。それでは望月様が考えられる「ゼネコンとは」また「ゼネコンの意義」をお教えください。

私たちゼネコンは、技術者の集団です。技術者としての提案・説明が出来なければ、意味はないと考えています。 

例えば、現在、物価高騰があり、非常に事業を開始する上でジャッジが難しい時期です。その時に工法変更やVEなどを提案し、価格を抑える提案をすることで事業予算内に抑える。もしくは、事業に重要な部分の面積を広げ事業収支を改善する提案をするなどお客様にもメリットを感じてもらえるような提案をすることが、差別化にもなるし、これが技術者だと思います。こういったところで国土さんは違うよね、やっぱり国土さんだよねと認識していただけるような存在になりたいと思っています。 

単純な価格競争で勝負するのではなく、国土さんがやるのであればぜひ特命でお願いしたいと言ってくれるような会社であるべきだと思いますね。 

御社の中期経営計画を拝見しました。2029年に時価総額1000憶円、営業利益200億円という目標を掲げていますが、そこに向けてどういったことを会社としてやっていかれるのか、チャレンジしていくのかといった部分のお考えをお聞かせください。

まずは新規事業をとにかく広めていきたいと考えています。これから請負だけで生き抜いていける時代ではないので、領域の幅を広めていかないといけないと思っています。建設事業を基盤として安定していきながら、更に新規分野を伸ばしていき、建設事業と融合しながら伸ばしていければと考えています。 

そのためには、建築や土木も技術力や受注をするやりかたも含め、底上げをしていかないといけないし、しっかり利益を出せる基盤を作っていかないといけないと感じます。どうしても土木主体の会社は国に頼ってしまう感覚が強い傾向にあります。建築は元々民間主体なので、民間の受注をどう広めるか、そこでどう利益を上げていくかということに、ずっと試行錯誤をしています。民間工事の受注をしていくために、景気に左右されることなくある程度の利益を確保するにはどうしていくかということが重要だと考えています。 

今、建築が非常に伸びていますが、それをずっと伸ばしていこうという思いは私にはありません。 

今建築部門の社員数が500人くらいいるのですが、今の人数で完工高と利益がどれくらい上げられるかがポイントだと思っています。 

今の人数で技術力を上げて利益率もあげることを追及していこうと考えています。 

 

その中で、具体的にどこで勝負をしようとされていますか?

用途としては、物流、オフィス、工場、マンション、長期滞在型ホテルを主軸とし、時代によって主体を変えていこうと考えています。今は、トレンドになっていますが、物流を主体に行っていきます。 

あとは元々太陽光事業が強いのでその特性を活かして「環境の国土」と言われる会社になっていかなければいけないと思っています。環境ではゼネコンではトップというような会社に意識を変え、周りの皆さんからも認知頂けるような会社になっていくよう、技術力をより強めていきます。 

 

弊社が本当に力をいれているのは、関連事業本部・土木事業本部・建築事業本部三つの事業が一体で動くこと。どこのゼネコンも、土木は土木、建築は建築、不動産、エネルギーと、別々に作用しているのですが、弊社は全部を連携することで、波及効果を期待しています。 

弊社は土木に関しては、造成が強く、造成と太陽光はセットみたいなものですから、そこの実績は豊富にあります。そして、その太陽光発電をはじめとする再エネ電力施設の土木・建築のノウハウを活かして、創エネや省エネの提案を行って、電力コストダウンや設備更新など幅広いトータルソリューションを提供することが可能です。 

このように三事業連携というのが一つの弊社の軸になっています。

大手ゼネコンは地場ゼネコンなど積極的なM&Aを行って事業拡大を進めている印象ですが、地場ゼネコンとの関わりなどはどのように考えておられますか。

地域のゼネコンさんとは「うちはパートナーだと思ってください」というような関係を作っています。 

地域のゼネコンの方々と様々なコラボレーションをしながら、お互いに成長できる関係を築いていければと考えています。双方にとってプラスになることが重要です。地域のゼネコンの方の地域の情報量や情報の質が全然違ってきます。そこに当社のノウハウを提供し、お互いを補いながら強くなっていくことが重要だと思っています。それが長いお付き合いが続く秘訣だと思います。 

でも最近の傾向としては…。ご質問の通り、すぐにゼネコンはM&Aをしようとしますよね。弊社はそういうことを考えておらず、あくまで「パートナー」として協力していくということを大切にしています。 

弊社は1000人規模の会社なので、単体でやれることは限られているんですよ。ですが、色々な得意分野を持つ企業や人と連携して、事業の幅を拡げていきたいと考えています。 

どちらかというと下町ロケットというドラマのように、小規模のエキスパートが集まってみんなでやることによって利益を上げる、そういう形を目指しています。利益の額は少ないかもしれないですが…。利益率として悪くなければ、たとえば10億でリスクを買うより3億しかないけどちゃんと10%くらいの利益を堅実に上げる方が良いという考えです。 

また弊社は機械から始まっている会社なので、やっぱりそこの特徴を活かして他社との差別化を作るというところが重要ですね。 

東日本大震災の復興事業で全社一丸となって取り組んでおられ、「国土復興」が会社の原点であると朝倉社長も仰っていました。震災復興・災害復興に対する取り組みやお考えを教えてください。

そうですね。近年多発する集中豪雨や大型台風による自然災害に対し、堤防強化の切り札として「回転式破砕混合工法」(通称:ツイスター)という独自技術を提供しています。 

ツイスターという機械は土を混合して改良していく工法になるのですが、弊社はそれを何十台も所有しています。今までは堤防はあまり決壊していなかったかと思いますが、ここ数年の台風においては必ず日本のどこかで決壊してきています。それは今までの想定より自然災害レベルが変わってきたということだと思います。弊社はツイスター工法を使い、堤防をより強固にしていきます。 

震災復興というか、災害復興で貢献したいと思っています。 

また、洪水が起こると瓦礫と土が混ざるのですが弊社のツイスターはそれを瓦礫と土に綺麗に分けることができます。それにより土や木材を分別し再利用していくことが出来ます。この技術を活用いただきたいと考えています。災害復興についてはこれからも会社としての方針で力を入れていきますし、災害復興に貢献していきます。 

COMPANY
日本国土開発株式会社
創業 1951年
設立
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■事業内容

〇建築事業…マンション、商業施設など主に民間企業関連
〇土木事業…トンネルや道路など公共性の高い構造物
〇関連事業…不動産の売買や賃貸など不動産開発全般

1. 電源、交通、港湾、治山、治水、潅漑、干拓、地下資源の開発その他国土の開発に関する業務
2. 電源、交通、港湾、治山、治水、潅漑、干拓、地下資源の開発その他国土の開発の調査、計画及びこれに関連する輸出プラントの調査、設計並びにそれらのコンサルティング業務
3. 第1号の業務をなすに必要な建設用機械及び鉱山用機械その他の諸機械、器具等の製造、販売、貸賃、修理並びにその仲介に関する業務
4. 土木、建築工事に関する設計、請負及びマネージメント業務
5. 建設用資材、石材及び化学製品等の製造並びにその販売に関する業務
6. 不動産の売買、貸借、仲介、管理及び鑑定に関する業務
7. 陸上、海上運送業及び倉庫業
8. 採石法にもとづく採石業
9. レジャー施設(ゴルフ場、スキー場等)、スポーツ施設、宿泊施設の所有、貸借、経営
10. 土壌浄化、河川・湖沼・港湾の水質浄化等の環境保全及び一般廃棄物・産業廃棄物・建設副産物の収集、運搬、処理、処分、再生利用
11. 農産物の生産、加工、販売及びこれらに関するコンサルティング業務
12. 発電及び電気、熱等エネルギーの供給に関する事業
13. 前各号の業務に対する投資
14. 前各号の業務に附帯関連する一切の業務