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ゼネコンから積算事務所へ、50代初転職の理由。

2022.07.18

ゼネコンで建築施工管理として働いてこられ、途中で建築積算に転向されたFさん。50歳を過ぎて、新卒以来30数年所属したゼネコンから、大手積算事務所に転職するという大きな挑戦をされました。

一筋縄ではいかないご経歴をお持ちの方ですので、これはぜひ詳しくお話伺わせていただかねばと思い、今回お時間を頂戴してインタビューさせていただきました。

ゼネコンでの建築施工管理時代

Q.Fさんのお仕事のキャリアは建築施工管理からのスタートだったんですよね。

A.学生時代は建築の勉強をしていました。新卒で中堅ゼネコンに入社し、現場に施工管理として配属されました。当時は別に部署配属の希望もなく、ほんの数名が内勤に回されるくらいで、殆どの新卒は現場配属でした。

当時はバブルで現場も無数にあったので、一現場に一人、新卒がバラバラに配置されて、案件が終わるごとに上司が変わる感じ。現場に所長や次席の方もいらっしゃるので、実地で学んで来い!と放り出されました。

現場の管理、具体的には各職種の職人さん達への指示を現場にて行う事や問い合わせへの対応、毎週の定例打合せや施主・設計事務所の対応なんかをしていました。

Q.建築施工管理をやっていて、楽しかったことは何ですか?

A.現場でわいわい、色んな職人さんたちと交流できたことが楽しかったですね。現場によってメンバーも変わりますからたくさんの出会いがありました。ぶつかって衝突があったりして、ヒリヒリすることもたくさんありましたが、それも含めて面白かったです。

建築施工管理から建築積算への転身

Q.そんなFさんが積算に転向されたのはいつ、どんなきっかけだったのでしょう。

A.施工管理を始めて10年弱、30歳過ぎの頃です。

施工管理の部門長で、その方は見積部にもかつて所属されていたという経緯がある方なんですが、その方に打診されたことがきっかけでした。

見積部門の高齢化による跡継ぎ的な立場でとのお話で、15名くらいのメンバーの中で、32歳の私がぶっちぎりの若手でした(笑)

なぜ私であったかということなんですが、内勤でも上手くやっていけそうだというところを評価されたようです。

Q.資質を買われたということですね。しかしずっと現場に出てこられた方がいきなり内勤で積算というのは戸惑われる部分も多かったですよね。施工管理時代は見積もり部の方と交流はあったんですか?

A.全くありませんでした(笑)

閉鎖的なイメージしかなかったんで、どういうことをやらされるのかも見当がつかなかったです。

でもとやかく考えてもしょうがないかなと思って、とりあえず挑戦してみて合わなかったら転職を考えてみればいいかな、くらいの気持ちで見積部に飛び込むことにしました。

同じ会社とは言え全く畑違いの場所でしたし、今まで現場に直行直帰で会社自体に行くことも少なかったですから。いきなり内勤になったというのは働き方としても大きな違いでしたね。

でも、意外と業務自体は合っていて、わりと大きな違和感もなく馴染めたんじゃないかなと思います。

楽しいことも多かったです。

Q.見積部に移られて、最初に楽しいなと思われたのはどんな瞬間だったでしょう?

A.僕が異動になった頃は、見積部ではすでにパソコンを使って積算を行っていました。一人一台もPCがない時代で、触れること自体が珍しくてとても楽しかったんです。PCを使って業務をするというのは、今では当たり前ですけど、とても新鮮で特別なことに感じました。そこから5年くらいして一人一台用意されるようになったんですけど、それでも他部署からしたら相当進んでいるような、そんなレベルでしたね。

僕自身がメカ好きなので、そこの作業にわくわくした記憶があります。

Q.施工管理で得た経験は積算業務に活かされていますか?

A.細かな納まりがある程度身に付いていたので、設計図からそれなりにある程度想像しながら積算する事ができたところです。「納まり」の感覚は、予備知識的にあって損はないところだと思います。勿論本なんかで勉強をすれば理解できるものではあるんですけど、やはり現場を実際に知ってるというのは違うかなと思います。積算だけをしているとイメージがしにくいところかもしれないので、どこかの現場の施工途中を見させてもらうとかの機会があるといいですよね。

転職…中堅ゼネコンから積算事務所へ

Q.なぜ転職をしようと思われたのでしょう。

A.前職で30年ちょっと勤めてきましたが、このまま1社で終わりを迎えるのに自分の中で少々疑問を感じたのが一番の理由です。他の世界を見てみたいなと思いました。周りを見ていても、一社で30数年勤めてきたら、大抵そのまま定年のゴールテープを切るのが普通だと思います。でも私は、50代になり定年も現実的な将来として見えてきた時に、このままでいいのかな、挑戦してみたいな、という気持ちが出てきたんです。

ただ、この年齢で初転職なので、市場価値があるかどうか等、正直不安材料は山積みでした。

積極的にガンガン見つけて受けようという訳でなくて、良い所があったらいいなぁ、くらいの感覚で。2社の転職サイトに登録してゆるく機をうかがっていました。

いちばん最初に登録したところから数えると、転職先が決まるまで2・3年は経っていたと思います。

Q.次の企業を選ぶ上でのポイントは何でしたか?

A.重視したかったのは会社の将来性や、社長と社員の方々の人柄です。

Q.積算事務所に転職されましたが、これまでのゼネコン見積部とは環境や雰囲気など大きく違うことかと思います。

A.ゼネコン時代、辞める直前のあたりでは人材が流出してしまっていてほぼ外注に頼っていたので、社内で行う積算業務は値入がメインでした。協力業者との電話やメールやりとりをする事がほとんどでしたが、積算事務所ではそういった社外とのコミュニケーションは少ないなと感じますね。別にそれが少ないからどうというのではなくて、単純にやっている業務の違いによるものだと思います。

Q.転職してよかったなと思うことはなんでしょうか。

A.今までの人生からすると、まったく違った視野の世界を、まったく違った視点から見ることができたというのが一番大きいと思います。楽しく働かせていただいていますし、「転職してよかった」と、心から言えますね。

Q.「建築事務所での積算業務」の面白さ

A.今やっているのが数量積算なので、仲間や同僚との協働作業がとても楽しいです。いい方たちばかりの職場なので、コミュニケーションも円滑ですね。まだ数ヶ月ですが、もうここに何年もいるみたいだとか言われています(笑)

先程言いました通り、ゼネコンでは見積担当がほんの数人になっていたので、皆で一致団結して取り組むことが本当に新鮮なんです。チームワークっていいなと思いますね。

これから転職する人へメッセージ

どうかチャレンジ精神は忘れずにいてください。私自身、転職前は年齢でどこか区切ってしまうところがあったのですが、決してそんなことはないんだなと自分の体験をもってよく分かりました。

何歳からでも新しいことにチャレンジするのは可能です。勇気と行動力を持つことが大事だと思います。

勇気を出して一歩踏み出してみられてください。

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