コラム 建築技術者が書く、リアルなお仕事コラム。

5年後、どんな設備設計者になっていたいですか?|ゼネコン設備設計部と組織設計事務所の違い

2026.10.23

5年後10年後、あなたはどんな設備設計者になっていたいですか?

こんにちは。エステム建築事務所です。

さっそくですが、設備設計者としてキャリアアップを考えたとき、「ゼネコンの設備設計部」と「組織設計事務所」の求人を目にする機会は多いのではないでしょうか。

実際に転職の支援をする際、求職者の方から双方の“違い”をよく質問されます。

どちらも設備設計を担う仕事ですが、実際には仕事内容や設計への関わり方、求められる役割などが異なります。

しかし、求人票だけではその違いは分かりづらく、「どちらが自分に向いているのだろう?」と悩む方も少なくありません。

その為、年収や会社規模で比較されることも多い両者ですが、本当に考えるべきなのはそこではありません。

「5年後、10年後に、どんな設備設計者になっていたいのか。」

実は、その答えによって選ぶべき環境は大きく変わります。

今回は、建築業界専門の転職エージェントとして多くの設備設計者の転職支援を行ってきた経験をもとに、ゼネコン設備設計部と組織設計事務所の違いについてご紹介します。

結論

まず結論から言うと、ゼネコンは『建物をつくる会社(ものづくり)』、組織設計事務所は『建物を設計する会社』です。

そのままではないかと思われるかもしれませんが、実はこれが一番大きなポイントです。

もう少し具体的にいうと、ゼネコンの設備設計は、「どうすれば品質・工期・コストを満たしながら建物を完成させられるか」を考える仕事です。

一方、組織設計事務所の設備設計は、「建物に最適な設備システムを設計し、建物の価値を高めること」を考える仕事です。

要するに、ゼネコンは「施工を前提とした設計」、組織設計事務所は「設計を主体とした設計」だという風に言えます。

もちろん会社によって考え方の違いはありますが、この点を押さえておくと、それぞれの特徴が理解しやすくなると思います。

ゼネコン設備設計部と組織設計事務所を比較してみる

  • ① 設計の目的

ゼネコンでは、「その建物をどう実現するか」という視点が強くなります。

施工方法や工期、コスト、安全性まで考慮しながら設計を進めるため、より"実現性"を重視した設計になるケースが多い傾向です。

一方、組織設計事務所では、「機能性の高いより良い建物を設計すること」が最も重要になります。意匠担当,構造担当などと議論しながら、機能性や快適性、省エネ性などを追求していきます。

要するに、ゼネコンは「施工性・コスト・工期まで考慮した設計」で設計事務所「設計品質・機能性・提案力を重視した設計」の傾向が強いと言えます。

  • ② 工事監理のスタンス/施工(現場)との距離

ゼネコン設備設計部、組織設計事務所ともに、設備設計者が工事監理を担当するケースは多くあります。どちらも設計変更対応や、図面どおりに施工されているかの確認,各種検査など、設計者として重要な役割を担います。

そのうえで、違いが出やすいのは、工事監理のスタンスです。

組織設計事務所では設計者の立場(発注者の立場)で設計意図や建物の品質を実現する立場として監理を行うことが多い一方、ゼネコンでは施工部門との連携を前提に、施工性や工程、コストも踏まえながら建物全体を完成へ導く視点がより求められる傾向があります。

そのため、ゼネコンは必然と施工との距離が近くなります。

③ 身に付きやすいスキル・キャリアの違い

設備設計者として身に付きやすいスキルにも、それぞれ特徴があります。

組織設計事務所では、発注者との打ち合わせや意匠・構造設計者との協議を重ねながら、設備計画や設計提案を行う機会が多くあります。ゼネコンに比べ、提案の幅や設計自由度も高く、設備設計そのものの専門性や、建物全体を見据えた提案力・設計力を磨きやすい環境と言えます。

一方、ゼネコン設備設計部では、施工部門や協力会社、メーカーなど多くの関係者と連携しながらプロジェクトを進めます。設計事務所に比べ、施工条件やコスト、工程なども踏まえた設計判断が求められるため、設計事務所とは異なる制約条件の中で設計を行う場面が多くあります。その分、施工性の検討やVE(Value Engineering)やCD(Cost Down)など、品質を維持しながらコストや施工性を最適化する検討、工程やコストを踏まえた調整などにも携わる機会が多く、建物全体を俯瞰しながらプロジェクトを推進する力を養いやすい環境です。

つまり、

・組織設計事務所では「設備設計者としての専門性・提案力」を高めやすく、

・ゼネコン設備設計部では「建物全体を見渡し、設計から施工までを見据えた総合的な技術力・マネジメント力など建築技術者としての総合力」を身に付けやすい、 という傾向があります。

もちろん会社や担当案件によって違いはありますが、「どちらが優れているか」ではなく、どのような設備設計者を目指したいかによって、最適な環境は変わってきます。

※なお、設備設計者の担当範囲は企業によって異なります。特にゼネコンでは、電気・機械の両方を一人の設備設計者が担当する企業もあります。担当範囲によって身に付く経験や将来のキャリアの方向性も変わるため、応募前に確認しておくことをおすすめします。

④ 年収だけで判断するのは危険

近年、設計事務所もベースも上がっており、以前よりも差は縮まったものの、一般的にはゼネコンの方が年収水準は高い傾向があります。

しかし、応募前から「年収が高い」からゼネコンに絞るのはリスクです。

例えば、

設計を極めたい方がゼネコンへ転職すると、「思っていたより施工寄りだった」と感じるケースもあります。

逆に、建物完成まで関わりたい方が組織設計事務所へ転職すると、

「もっと現場にも関わりたかった」と感じることもあります。

給与だけではなく、どんな設備設計者になりたいかを考えることが重要です。

どんな人が向いている?

組織設計事務所が向いている方

  • 上流工程から携わりたい
  • 提案力,設計力を磨きたい
  • 発注者の要望をできるだけ叶えられる設計がしたい

ゼネコン設備設計部が向いている方

  • 建物完成までモノづくりに関わりたい
  • 現場との距離が近い仕事がしたい
  • 施工性を考えた設計がしたい
  • より現場レベルのコスト感覚を身に付けたい

転職市場ではどう評価される?

実際の転職市場では、ゼネコン出身だから有利、組織設計事務所出身だから有利という単純な話ではありません。

企業が見ているのは、「どのフェーズで、どのような経験を積んできたか」です。

例えば、

  • 基本設計・実施設計の経験
  • 工事監理の経験
  • 大規模案件や設備比重が大きい施設の経験
  • 発注者との折衝経験
  • 省エネ提案経験
  • VE,CD提案力(コスト感覚)など 、経験の幅や深さが評価につながります。

私自身、転職支援をしていて感じるのは、組織設計事務所では「より良い設計を追求すること」にやりがいを感じる方が多く、一方でゼネコン設備設計部では「設計した建物が実際に形になり、多くの関係者と協力しながら完成まで携われること」にやりがいを感じる方が多いという点です。

まとめ

ゼネコン設備設計部と組織設計事務所は、同じ設備設計でも仕事内容や役割、求められるスキルが異なります。

設計を極めたいのか。施工まで含めた建物づくりに携わりたいのか。

発注者への提案力を磨きたいのか。プロジェクト全体を俯瞰できる技術者になりたいのか。

ゼネコン設備設計部と組織設計事務所に優劣はありません。

大切なのは、「どちらが良い会社か」ではなく、「自分がどんな設備設計者を目指したいのか」を明確にすることです。

建築業界特化エージェントかつ一級建築士事務所である弊社が、求人票だけでは分からない各社の特徴も踏まえながら、一緒に最適なキャリアを考えさせていただきます。

近いうちに、「組織設計事務所は何を比較すれば自分に合う会社が分かるのか?」をテーマに、設備設計者の視点で各社の違いを見るポイントを解説する予定です。

今すぐの転職では無くても、「自分の経験でどのキャリアが選べるのか知りたい」という方も、建築業界特化の転職エージェントとしてキャリアの整理のお手伝いもしています。
また、転職相談だけでなく、建築積算、設備積算、BIM、DX、GXなど、建築技術に関するご相談やお問い合わせも、いつでも歓迎いたします!

コラムアーカイブ