コラム 建築技術者が書く、リアルなお仕事コラム。
人類は再び月へ。建設業が宇宙に向かう日
今回は少し建設の話題から離れますが、最近気になったニュースについて触れてみたいと思います。
先日、米国主導の有人月探査計画「アルテミスⅡ」において、宇宙船「オリオン」の乗組員4名が、約半世紀ぶりに月の周回飛行を実施し、無事に帰還したというニュースが報じられていました。
人類が再び月へと近づいている。そんな事実に、宇宙開発が「過去の偉業」ではなく、「現在進行形の挑戦」なのだと改めて感じさせられます。
社内でもこの話題が少し上がっており、私自身も興味を持って調べてみました。
そもそもアルテミス計画とは、米国を中心とした国際協力のもとで進められている月探査プロジェクトです。
かつて1960~70年代に行われたアポロ計画では、「人類を月に到達させること」そのものが大きな目標でした。実際に1969年には人類が初めて月面に降り立ち、その後も複数回の月面着陸が行われました。
しかし今回のアルテミス計画は、当時とは少し考え方が異なります。
単に月に行くことがゴールなのではなく、月に滞在し、継続的に探査を行うことが大きな目的になっています。月面基地の建設や資源の利用、さらにはその先にある火星への有人探査まで視野に入れていると言われています。
50年前には到達がゴールだったものが、今では滞在し、その先へ進むことへと発想が広がっている。
技術の進歩はもちろんですが、人類の視点そのものが少しずつ変わってきているようにも感じます。
ちなみに「アルテミス」という名称は、ギリシャ神話に登場する月の女神に由来しています。
アポロ計画の「アポロ」は太陽神であり、アルテミスとは双子の関係にある神です。かつてのアポロ計画と現在のアルテミス計画が、神話の名前の上でもつながっているというのは、なかなか象徴的なネーミングだなと感じました。
こうした流れの中で、個人的に少し面白いなと思ったのが建設業界の動きです。
実は日本のゼネコン各社も、宇宙開発という新しいフィールドに少しずつ挑戦し始めています。
例えば大林組が構想している「宇宙エレベーター」は有名なプロジェクトの一つです。地上と宇宙を全長約9万6000kmのケーブルで結び、人や物資を運ぶという壮大な構想で、もし実現すればロケットに頼らず宇宙空間へアクセスすることが可能になると言われています。
安藤ハザマでも2024年10月、宇宙開発分野での技術革新と事業拡大を目指して「宇宙技術未来創造室」を設立しました。
そこで発表された新しい構想の一つが、月面での作業や休憩、一次避難などを想定した「宇宙シェルター」計画です。もう一つは、月の地下空間に居住や研究、生産の拠点をつくる「ルナ・ジオフロント」計画。名前だけ聞くと少しSFのようにも思えますが、企業としては実現に向けて検討が進められているプロジェクトです。
また、清水建設も月面拠点や宇宙ホテルといった構想を発表しており、宇宙に建設するという未来も、完全な絵空事とは言えなくなってきているのかもしれません。
とはいえ、実際に宇宙で建築物をつくるとなると課題は山ほどありそうです。
無重力環境での構造設計、放射線への対策、資材の輸送方法、さらには法制度の考え方や安全基準など、考え始めると未知の領域ばかりです。
ただ、日本において鉄筋コンクリート造の建物が普及し始めてから、まだ100年余りしか経っていません。
その短い期間の中で都市の風景は大きく変わり、高層ビルが立ち並び、大規模なインフラが整備されてきました。かつては想像の中にしかなかった建築が、今では当たり前の風景になっています。
そう考えると、宇宙に建築物が存在する未来も、決して遠い話ではないのかもしれません。
人類が月を目指し、その先の火星へと視線を伸ばしていく中で、建設という仕事の可能性もまた、地上だけにとどまらず広がっていく。
そんな未来を少し想像してみると、なんだか少しワクワクしてしまいます。
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