コラム 建築技術者が書く、リアルなお仕事コラム。
積算はどんな仕事?業務内容と適している人を解説
「建築現場で仕事をしていたけど、続けられなくなってしまった…」
工事現場の作業員などの仕事をしていて、キャリアチェンジを考えた経験はありませんか。
建築業界での仕事経験があり、キャリアチェンジを検討するあなたには、積算職をおすすめいたします。「積算」と呼ばれる仕事を初めて知った、または分からない方のために業務内容や適している人について解説します。
目次
積算は工事に必要な金額を出す仕事
積算とは、建築士が作った図面から各種工事に使用する材料や数量を算出し、工事に必要な金額を出す仕事です。商業施設やマンションの新築・改修など全ての建設工事で仕事が発生し、工事に「どれだけのお金を使うのか」を把握できます。
積算業務の大まかな流れは4ステップで、詳細は下記の通りです。
1.図面から工事に必要な材料と数量を拾う
「拾い」とは、図面に記載された仕上などの数量を計上することです。
図面から材料を洗い出し、必要な面積や長さ、個数を算出します。
積算範囲や建物構造によりますが、外装材や建具、コンクリートや鉄骨も拾いの対象です。規模が大きい建物を拾う場合は複数人でチームを組み、手分けして工事に使う材料と数量を拾います。
2.内訳書などの書類作成
図面から積算範囲の材料と数量を拾い終えた後は、内訳書の作成に移ります。
内訳書には拾い上げた材料の名称や規格、数量を記載していきます。提出先によって内訳書式や細目の書き方が変わってくるので、注意しなければなりません。
また、内訳書だけでなく、拾い上げた材料や数量の根拠となる資料『数量調書』など他の書類も作る場合があるので、提出先の希望に応じて柔軟に対応します。
3.金額の設定(値入)
内訳書を作成した後は、材料の単価入力です。
単価の入力作業は「値入」と呼ばれており、辞書のように数百ページもある刊行物や歩掛資料、県ごとに異なる単価表など様々な資料を確認しながら入力します。
資料から単価が確認できない細目は、備考欄に「見積もり」と記載し、提出先の担当者が分かりやすい内訳書作成を心掛けます。
4.内訳書のチェック
完成した内訳書をチェックします。
確認する内容としては、主に下記の通りです。
・図面に書かれた材料が内訳書の細目にあるか
・拾い上げた数量を内訳書に転記できているか
・提出先の決まり通りに内訳書が作られているか
・値入で記載した資料の名称やページが備考欄に書いているか
・細目や工事ごとの合計金額が正しい数字になっているのか
提出先に正確かつ分かりやすい内訳書を出すために大切な作業です。
誤った内訳書の提出はトラブルの元になるため、ミスはゼロにする意識でチェックしなければなりません。
積算職に就いた人の1日の流れ
積算の仕事は会社や役職によって差はありますが、下記のように1日を過ごします。
・8時:出社
・8時10分:朝会議…本日の仕事内容や予定、確認事項を報告
・~12時:積算業務…受け持つ案件の積算
・13~17時:積算業務…受け持つ案件の積算
・17時~:夕会議…本日分の仕事の進捗状況、確認事項を報告
・~18時:まとめ…積算業務をしつつ、日報の記入など
一般的に定時で退社できますが、抱える案件数が多い時や年度末の繁忙期などは残業や休日出勤で対応する場合があります。
激務になるとしても一時的なので、積算の仕事はワークライフバランスを整えやすいです。
積算職の年収はどれだけもらえるのか
積算を仕事にした時の年収は200万~900万前後と幅があります。
新卒や未経験者なら200万~300万前後、有資格者の方が転職した場合は400万~900万前後とバラバラです。
経験を積んで市場価値が上がれば、上限の900万に近い年収で雇ってもらえる可能性があります。
積算職に適している人
積算は建築の知識と根気が必要な仕事です。
下記の要素を備えている人が仕事に適しています。
建築の一般知識を持っている人
積算は図面を読んで材料や数量を拾うため、建築の一般知識を持っていると便利です。
例えばRC造の建築物を積算する場合、内装材の壁下地に石膏ボードを使用する旨が図面に記載されていたとしましょう。RC造で内装材の壁下地に石膏ボードが使われる時は、GL工法か鋼製壁下地材の上から貼り付ける方法が考えられます。
使う材料や工法が異なると、工事に必要な金額に違いが生まれます。正しい積算を行うためにも、建築の一般知識を持っていると良いです。
数字に強い人
積算は図面から確認できる部屋や屋根の形を様々な図形に当てはめて計算し、必要な材料の面積を出します。面積の計算をし続けるため、根気強さが求められます。
また、複雑な形の場所でも拾い落とさない計算力と想像力もあると便利です。
意思疎通ができる人
積算は図面を書いた建築士や、1つの物件を拾うチームメンバーと意思疎通しながら行う仕事です。
建築士とは図面上にある記載のくい違いや不明点の確認、チームメンバーとは拾う場所の
確認などで意思疎通を図ります。また、図面上の不明点などをまとめる質疑書を建築士に提出する場合は、質問内容を正確に文章で伝える力も大切です。
積算は数字や根気の強さが求められる仕事
積算の仕事や適している人について解説しました。
建築物の規模が大きければ大きいほど、確認する図面のページ数は膨大です。
膨大なページ数の中から必要な材料を全て洗い出し、数量を算出する積算の仕事は専門職といえるでしょう。
専門職といえる積算ですが、最近は積算ソフトの活用で未経験からでも採用する企業は増えてきています。
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