コラム 建築技術者が書く、リアルなお仕事コラム。

建築技術者が担える「営業」の話~信頼と受注の相乗効果~

2023.08.29

建物の建設時における工事種別は大きく建築工事・建築設備工事の2つに分けられ、建築設備工事の中でさらに電気設備工事、機械設備工事に分かれます。

私は機械設備工事に新卒から12年間従事してきました。今まで機械設備の設計してきた経験についてはこちらにありますが、今回はある程度設計と工事を一人で完了できるくらいの知識と経験を得た頃のお話しをしたいと思います。

設計から工事までの担当者として

入社して数年間は設計担当者として工場、病院、研究施設等様々な物件を経験しました。機械設備全般の知識をしっかりと吸収した時点で施工管理の担当になりました。そこから数年間施工管理で様々な現場を担当し、小さな工事であれば一人で完遂する事ができるようになりました。

ただ、やはり当時の社内では設計も数年、施工管理も数年しか経験が無いため、まだまだ「知識が浅く失敗の多い若手」の部類に入っていました。特に施工管理業務では私の段取りの悪さで職人さんに迷惑をかける事があり、工事費の見落としによりギリギリ黒字物件がほとんどでした。(時に赤字を出して怒られたこともあります)

施工管理者の受注について

私が施工管理の担当者時代、短期(1週間くらい)の改修物件を担当する事がありました。短期工事ですので受注金額もそんなに大きくありませんでしたが、事前打ち合わせから担当を任され、工事期間の1~2か月前からお客さんと顔を合わせるようになりました。

短期工事は無事に終了し、工事完了書類の提出、取り扱い説明書の作成、撤退の準備をしていた時のことです。お客様から、ある部屋の湿度が異常に高くなり下がらないと相談がありました。幸い、施工管理担当になる前は設計部にいましたので、空調機の仕組みや温度湿度の制御方法の知識がありました。

工事も完了し、残すは撤退の準備だけだったので割と時間に余裕があった事もあり、お客様と世間話をしながら問題の部屋と空調機の調査に向かいました。実際に空調機を調べると直ぐに、空調機の中でしっかり除湿ができておらず、外気とほぼほぼ同じ状態である事が分かりました。除湿するための温度センサーと冷却制御部分の故障が原因でした。また、実際の設定値では、きちんと除湿できない事も分かりました。間違った設定値になっていた事に関しては、誰かが何の点検等のタイミングで設定を変えて、設定を戻さずになっていた可能性が高いと判断しました。

そこで、お客様に空気線図を用いて温度湿度の制御方法を説明し、実物を目の前にしながら空調機の仕組みと問題箇所を指摘、修繕の部品説明を行いました。そうしたところ少額ではありますが、追加工事の名目で発注を頂く事ができました。

これが初めて、私自身がお客様から直接受注できた工事の案件でした。

後日、無事にセンサーの部品取替と除湿の設定を適正値へと変更し、短期工事の完全撤退を迎えました。

さらにそこから数週間後、役所や労基署など関係各所へ出した書類を、最終提出するためにお客様のもとへ伺いました。その時に、修繕した空調機や部屋の状況もお訊きして、問題なく稼働出来ている事が確認出来ました。お客様からはとても感謝され、追加工事の方がやりがいを感じた事を覚えています。

このことがきっかけとなり、さらに「実は事業を拡大し工場の建設計画があるから、ぜひとも御社にも参加して欲しい」とのご要望をいただくこととなりました。さすがに、いち社員が回答できる内容では無かったため営業部へ引継ぎましたが、お客様からの信頼を得ることができたと感じ、とても嬉しかったです。

一般的には技術職と営業職は全く別の仕事内容であると認識されています。技術職・営業職の枠に捕らわれることなくお客様の困っている事を解決するように仕事をしていれば、それが例えどんなに小さな内容だとしても、後から自分自身の糧となり大きく成長できます。実際に本件においてもお客様とのやり取りがいつの間にか上長まで話が上がっており、後日労いの言葉を頂きました。

技術営業について

技術者が営業的な役割も担えると、会社として受注が出来、且つ営業担当者は別の仕事をする事ができるので、会社全体で見た場合利益に直結します。そのため社内での個人評価がとても上がりやすくなります。

特に私の経験上、建築系の技術職の方(設計担当や工事担当)はお客様と繋がる機会が多いため他の業種より仕事の依頼を直接頂くチャンスがとても多いと感じています。せっかく建築系の会社にいるのであれば、会社からの評価を上げるためにもチャンスを上手く利用しましょう。2回、3回と新規受注を繰り返していると上長(課長、部長、支社長など)から「技術職なのに頑張っている」と目を掛けてもらうようになります。営業は仕事を取ってくることがメインの仕事ですが、技術職は設計や工事をする事がメインの仕事であるため、良い意味で目立つことができます。

技術営業力を磨く事により、お客様からの信頼も得ることができ、また会社からの信頼や評価を得ることができると私は感じています。現在建築系の技術者や、建築系に興味があり転職を考えている技術者の方々にはそこの部分を意識すると仕事の環境が変わるかもしれません。ぜひ一度試してみられてはいかがでしょうか。

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