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ファシリティマネジメントとは?
ファシリティマネジメントとは
ファシリティマネジメントには非常に広範囲な意味が含まれており、なかなか言葉で言い表すことが困難なものですが、公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)によると、
ファシリティマネジメントとは「企業・団体等が組織活動の為に、施設とその環境を総合的に企画・管理・活用する経営活動」
と定義されています。少し難しいのでもう少し掘り下げて紹介します。
従来の施設管理と違うところは「現状の施設の維持・保全」の施設管理に対して、ファシリティマネジメントは「施設のあるべき価値を引き出し、経営戦略にも目を向けライフサイクル、将来も考慮したマネジメント業務です。
具体的にどんなことをするのかいくつか挙げるとすると
・施設全体の経年劣化による従来の施設管理としての維持・保全
・施設内の空きスペースをより効率的にリロケーションなどに有効活用
・施設へ環境問題対策などを配慮したSDGsなどの導入
・エネルギー効率最適化を目的に高効率の照明器具や空調などを導入
といった業務が挙げられます。
ファシリティマネジメントの役割
ファシリティマネジメントは経営組織の事業を支える4つの機能(人事・ICT・財務・ファシリティマネジメント)の1つとして経営基盤を支えています。
ファシリティマネジメントの業務内容は会社によって範囲は様々ですが、総務の仕事の一部であり、設備も含めた施設全体、不動産・契約関連、警備、清掃、エネルギー管理、備品配置や固定資産など、広範囲に関与することになります。
従来の施設管理よりもはるかに業務の範囲は多岐にわたるため、建築、不動産、法務、財務、ICT、環境など分け隔てのない様々な知見が必要になります。
FMとPMとAMとBMとは?
ファシリティマネジメント(以下FMと略)とよく似た業務でプロパティマネジメント(以下PMと略)、ビルマネジメント(以下BMと略)、アセットマネジメント(以下AMと略)といったものがあります。
PMとは、施設などに関わる「人」についての管理業務を行います。
もう少し、具体的に説明すると、建物の空室の入居者募集や契約関係、賃料回収や入居者のクレーム対応など、不動産関係の業務をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
BMとは、先ほどの施設の不動産のような「人」に関わるPMに対し、施設の「建物」に関わる管理業務になります。こちらももう少し具体的に説明しますと、施設の設備の点検やメンテナンスや清掃や建物の美観について、警備巡回や防災などの実務作業の管理をする業務です。
AMは資産管理についての業務です。企業の資金や資産など、どのように活用していけば収益が最大化できるかのか、投資管理などをする業務になります。財務とか金融の資産運用といった分野の業務がイメージしやすいでしょうか。または、投資家のようなイメージがわかりやすいでしょうか。
FMとはこれら上記のPM、BM、AMを基本とし、施設のあるべき姿について将来も見据えて戦略的に模索していく業務です。
ファシリティマネジメントに向いている人は?
まず、ファシリティマネジメント業務には必要な資格というものがありません。どちらかというと資格よりも実務経験を積んでいく方が重要です。しかし、建築士や宅地建物取引士、エネルギー管理士や電気主任技術者など直接的に資格を活用することはほとんどありませんが、これまでに勉強してきた知識は業務に活きてきます。学生時代から自分の勉強してきた専門とは違うから関係ない、前職の実務経験からは程遠いものはよくわからないから自分は関わらないなどと、自分の専門領域の垣根をつくる人は向いていないかもしれません。
逆に自分の可能性を狭めることなく、好奇心旺盛でありとあらゆるものに興味を持ち、勉強し続ける人がファシリティマネジメントに向いています。
また、ファシリティマネジメント業務において、企業内のありとあらゆる部署の方々と関わって社内調整をしながら連携して仕事をすることがメインになるため、非常に高いコミュニケーションスキル力やスケジュール管理能力を求められます。そして、これまでの「あたりまえ」と言われてきた過去の常識にとらわれることなく、時代の変化に応じて変化していく柔軟な発想や様々な意見を取り入れていく考え方もこの業務では必要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ファシリティマネジメントはまだ比較的新しい言葉ですので、施設管理との違いがよくわからなかったり、業務においても実態があまりみえにくい内容であったと思います。
しかし、この記事を読んで少しでもファシリティマネジメントについてご理解いただけたのであれば嬉しい限りです。
ファシリティマネジメントは将来性のあるまだまだ無限の可能性を秘めた新しい分野の仕事です。
また、SDGsというような言葉が普及してきた昨今、あらゆる企業のファシリティマネジメントはより重要度を増してきています。
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