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構造設計者の転職とは?
構造設計者の転職とは?
今回は、構造設計者の転職について現役構造設計者が自身の経験も踏まえて解説します。
「建築構造設計業界へ経験者として転職したいと思っているが、どんな準備をすればよいかわからない。」という方は、ぜひご一読ください。
① 構造設計者が転職するときの心構え
一般的に経験者として転職することは、新卒とは異なり即戦力として入社することを意味します。
それは構造設計者の転職においても同様で、転職の際には履歴書とともに構造設計に関わる実力や経験を自分自身でプレゼンすることが求められます。
また構造設計方針、扱っている建物種別や規模なども会社によって異なります。
特に構造図の書き方や設計クライテリア(安全率)、設計の進め方(何人体制で進めるかなど)は千差万別です。
従前の会社で培った構造設計技術が失われることはありませんが、転職により構造設計方針や構造設計手法が変わることについて、構造設計者自身が変化を受け入れることが必要になります。
② 構造設計者が転職活動前に準備するべきこと2選
上述した心構えを踏まえて転職経験のある私が、構造設計事務所に転職する際に実際に準備しておいてよかったことを2つご紹介します。
構造設計を主な希望業務として転職する場合は、ご紹介する2つを準備しておくと面接時や転職後にも役に立ちますので、転職希望の方はぜひ準備しておくことをオススメします。
準備①:職務経歴書に経験した構造設計案件の情報を詳細に記載する。
構造設計事務所に転職した際に意外と見られているなあと転職後に気づかされたのが、職務経歴書でした。
特に職務経歴書の記載内容の中で過去の構造設計案件(「構造種別(鉄骨造・RC造・木造など)・計算ルート(ルート1~3)・ 積(延床積)」)を られていて、転職後に即戦 として活躍できるのかを判断されていました。(職務経歴書を一番見ていたことをよくお聞きします。)
面接での受け答えも重要ですが、職務経歴書に過去に経験した案件情報をより詳細に書いておくと、「どんな構造種別が得意なのか」、「どのくらいの規模までなら任せられるか」、など入社した後の構造設計者としての活躍イメージを具体的に、かつ客観的に伝えることができます。
また構造設計の経験に限らず、現場監理の経験も職務経歴書に記載しておくとよい経験の一つです。
特に施工部門を持たない構造設計事務所では、机上ではない実際の施工方法・施工手順を構造設計に反映できたり、また構造設計者自身が現場監理補助をする機会も多いため、重要なスキルの一つになっています。
実際に周りにも現場監理経験のみで入社された方がおり、「ここって実際どう施工するんでしょうか?」と現場監理に関して周囲から相談されている場面が多く見受けられます。
準備②:転職先の会社がどんな構造解析ソフトウェアを使用しているか調べる。
構造設計を生業とする会社に入社する以上、構造設計業務の即戦力として期待されます。
その際に意外と重要となるのが、CADや解析ソフトなどのソフトウェアが従前の会社と同じかどうかです。
構造設計者の転職は、あくまでも技術力が売りなので使用ソフトウェアに左右されないと思われがちです。
もちろん構造設計の技術力があるかどうかは重要ですが、現代の構造設計において構造計算書・構造図などの成果物を効率的に提出するためには、CADや解析ソフトウェアの力が必要不可欠になりつつあります。
操作や結果内容がソフトウェアにより微妙に異なるため、どんなに技術力がある構造設計者であっても、初めて使うCADや解析ソフトを使いこなすのにはそれなりに時間を要します。
転職後はただでさえ環境が変わり人間関係など適応が大変な時期であるため、どんなCADや構造解析ソフトウェアを使用しているのかについて事前に調べて業務イメージをつかんでおくと、転職後もスムーズに構造設計に取り組めます。
最近では構造設計事務所の自社サイトで実際に使用しているソフトウェアを一覧で記載していることも多いので、サイトなどで事前に確認されることをオススメします。
また転職先の会社との面接の際に使用しているソフトウェアを共有しておくこともオススメです。自分自身と転職する会社の両者にとってプラスに働くことが考えられます。
③ 構造設計者が転職の際に持っておくべき資格
最後に構造設計者が転職時に持っておくべき資格と心構えについてご紹介します。
まず資格については、ズバリ「一級建築士(もしくは構造設計一級建築士)」を持っていると転職時には有利に働きます。
特に、大手企業(ゼネコンなど)へ構造設計者として転職をご希望の場合は、「一級建築士』は必須となる資格となっています。(募集要項に「一級建築士の有資格者」であることが条件として記載されていることが多いです。)
ただし、一級建築士を持っていないと必ず構造設計者としての転職が難しくなるわけではありません。
しかし、より高待遇な職場を期待するのであれば、「一級建築士」は取得しておくべき資格といえるでしょう。
今回は、構造設計者の転職についてご紹介しました。
本記事が転職活動の一助になれば幸いです。
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