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電験三種の資格を活かした転職方法について
電験三種は、電気業界における最高峰の資格です。そのため、取得することで転職に大きく役立ちます。主に電気主任技術者として従事する際に活用する資格ですが、その他の業界でも需要の高い資格です。
そこで今回の記事では、電験三種の資格を活かした転職方法について解説します。電気主任技術者として転職する際の方法や取得することで転職できる業界についてみていきましょう。
電気主任技術者としての転職は主に2種類
電気主任技術者として転職する場合、転職する先の種類としては、主に2種類あります。
筆者は外部委託契約をメインに経験しており、仕事をしていく中で企業に専任の電気主任技術者としての経験も得ています。経験を活かしてそれぞれの特徴についてご紹介します。
外部委託契約をメインにしている会社へ転職
電気主任技術者の外部委託契約をメインにしている会社とは、一般的に「電気保安協会」と名がついている会社であれば、該当します。
本来、事業用電気工作物を設けている施設一つに対し一人の電気主任技術者を設置することが電気事業法にて義務づけられています。電気保安協会は、これを外部委託契約で請け負うことにより成立している企業です。
電気主任技術者として雇われた場合は、数十件の担当を任されます。各施設において月次点検や年次点検などの保安管理業務を行うのがメインの仕事です。
任される担当においても大型の設備を多く任されるわけではなく、簡易な商業施設を含めてバランス良く配分されます。1日のスケジュールも自分で決定できるため、自由度が高いのも特徴です。
電気主任技術者としての多くの経験が得られて、知識と技術力の習得が可能です。30代後半の方から50代後半の方まで多くの方が転職しています。
1つの企業に専任の電気主任技術者として転職
もう一つの転職が外部委託契約ではなく、企業に電気主任技術者として直接専任するといった転職です。これは、ビルや病院・太陽光発電設備など比較的大型な電気工作物を設けている企業が多く求人を募集しています。
先ほどと違って1つの企業で保安・管理を行うため、1日に消費する体力量としては多くありません。ただし、仕事に伴う責任能力は強く必要です。
電気に関する異常を自分の力で解決する必要があるため、求められる知識量や技術力も先ほどより強く求められます。ただし、年次点検や竣工検査などのみを外部委託して自身は作業の総合指揮として従事するといったことも可能です。
筆者自身も太陽光発電設備の専任を務めたことがありますが、体力的な面で言えば専任での従事が楽でした。1日を自分のペースで費やせるため、自由度が非常に高いです。
そのため、専任の電気主任技術者で関わった方は、電気の現場で多く経験値を得た40代~50代の方がほとんどでした。
電気の現場で既に経験値を得ている方は、電験三種を取得して電気主任技術者としての経験も得た後、専任として従事するといった選択もあります。
電験三種の魅力は手に職を就けて安定した働き方ができること
電験三種は転職でも大きく役立つ資格ですが、中には「資格難易度の割に年収が日本人の平均程度」「仕事に責任が伴うため割にあわない」といった意見があります。
確かに電験三種のみの取得で年収1,000万円は目指せません。もし目指すのであれば、上位資格の電験二種・一種の資格取得または独立しての活動が必須です。
ただし、電験三種を取得して経験を得た30代後半から50代後半の方で、日本人平均年収(約440万円)を大きく上回る電気主任技術者は実際に何人も見てきました。独立をしているわけでもなく、先ほどご紹介した2通りのどちらかについての働き方です。
また、電験三瞬の魅力は、手に職を就けて安定した働き方を実現できることにあります。電気主任技術者は法律で設置が定められているため、すぐに無くなることはありません。
現在はAI技術が普及しており、電気業界についてもIot(インターネットオブシングス)という技術の導入が検討されています。
具体的には、AI技術を用いて電気設備の電圧・電流値や温度の管理を遠隔で行うといったものです。
この技術が普及するとしても何年か先の話ですし、導入しても最終的には技術者自身が異常の点検・対応するといったことに変わりはありません。
そのため電気主任技術者は「電気業界の中でシニア世代になっても働ける」といった評価を集めている30代後半以上の方におすすめできる職業です。
電験三種の資格と活かすと転職できる業界は幅広い
電験三種は、転職でも有利な資格ですが電気主任技術者をメインとする「電気保安業界」以外にも資格保有者を募集している業界は複数あります。
1 | ビルメンテナンス業界 |
2 | 再生可能エネルギー業界 |
3 | 建設・プラント業界 |
上記の業界でも電験三種の保有者は多く募集されています。電気工事士といった資格や施工管理技士などの資格を既に保有されている方であれば、更に転職で有利です。
既に現場で経験を得ている30代後半以上の方であれば、電験三種を取得することで即戦力となることが可能でしょう。
まとめ
今回の記事では、電験三種を活用した転職方法について、電気主任技術者としての転職方法や転職できる業界とあわせて解説しました。
電験三種は、試験合格または認定による取得で保有できますが、どちらにしても取得するまでに数年単位要することのある難易度の高い資格です。
ただし、取得することで転職できる業界が大きく広がり、電気主任技術者として従事する場合にも技術者としての価値を更に高められます。
電気主任技術者は法律により設置が定められているため、安定した業界で従事したい方にとって、電験三種は是非取得したい資格といえるでしょう。
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