コラム 建築技術者が書く、リアルなお仕事コラム。
電気主任技術者の業務内容②
やりがい、体験談
電気設備の保安・監督を目的とした点検の仕事をメインで行う電気主任技術者に関する後半の記事です。前半では、業務内容をメインとして解説しました。
後半では、筆者が実際に従事して感じたことや仕事のやりがい、これから従事する方へ向けたお伝えしたいことを中心にご紹介します。
現在、電気主任技術者への就職や転職を検討している方は、是非ご覧ください。
電気主任技術者に就いて感じたこと
まず始めに、筆者が電気主任技術者として従事し、実際に感じたことをご紹介します。30代後半~50代後半の男性で電気主任技術者の特徴について知りたい方向けの内容です。
新しい知識が多く得られる
電気主任技術者として従事するためには、第三種電気主任技術者試験(通称:電験三種)の合格又は認定による取得が必要です。電験三種は、理論・電力・機械・法規の4科目から構成されており、それぞれで多くの知識が求められます。
ただし実際に従事して感じたのは、全部の知識が求められるわけではなく、必要な知識を更に深くすることです。
理論的な知識や設備の名称といった知識は前提として、そこに応用能力や新しい知識が必要とされます。電気設備によって形状が異なる場合もあるため、臨機応変な対応が必要です。
そのため、毎日の仕事を通して自然と多くの知識が身につきます。点検がメインとなるため、自由度が高いことも特徴といえるでしょう。
電気主任技術者は、既に電気の現場で従事したことのある方であれば、これまでの経験を活かしつつ、新たな知識をつけて自身の付加価値をより高められる職業です。
実務経験があると転職でさらに有利
電気主任技術者として従事する際に実務経験があると有利なのは確かです。これは、保安協会と呼ばれる会社などの外部委託契約に実務経験が必要となるためです。
実際に実務経験を満たした電験三種保有者で、30代後半の方や40代・50代の方が転職するのを身近で見てきました。
転職後、すぐに担当を持ち、現場に従事している方は多いです。これまでに電気の現場で多くの経験値を得ていれば、更に転職を有利にできるでしょう。
また、仕事を通して知識や技術力を身に付けられるか、コミュニケーションを適切に行えるかに関しても重要です。
電気主任技術者の仕事は、他企業の電気工事士から一般の方まで多くの人とコミュニケーションを取る場合もあります。そのため、相手にあわせて必要な事柄を説明する力が必要です。
体力面で厳しい場面もある
技術者としてだけでなく社会人としての必要な力も高められる電気主任技術者ですが、筆者自身が大変だと感じた場面も2つほどあります。
それが「深夜作業」と「高所作業(電柱などへの昇降)」です。これは、外部委託によって多くの企業から点検を請け負っている企業であれば該当します。
停電しての作業の場合、企業や施設によっては閉店後や開店前に点検を依頼される場合があります。冬の深夜や長時間での夜間作業は、体力面で厳しいです。
また、電柱に昇降しての高所作業は体勢によって腰にも負担がかかります。現在は、フルハーネスや高所作業車の活用により負担は減少しましたが、現場によっては作業者が電柱に昇降するといった場面はまだまだ存在します。
ただし、30代後半以上の方で体力面に自信がない方であれば、転職する際に意思を伝えるのも一つの方法です。現場では、試験器の操作や作業指揮など責任は必要な反面、体力は多く消費しない役割があります。
体力面で自信のある方は別ですが、既に現場経験をしている方で体力面が厳しい方は、あらかじめ伝えておくのがよいといえるでしょう。
電気主任技術者としてのやりがい
筆者が実際に電気主任技術者として従事し、やりがいだと感じたのは「社会への貢献度が非常に高い」といった点です。
知名度が低く、電気工事士などと比較して地味な場面も多い電気主任技術者ですが、仕事には多くの知識と確かな技術力が要求されます。
電気主任技術者として従事していることは、知識を多く身につけていることの証明となるため、他企業からの信頼度も高いです。
そのため、仕事を依頼された企業や一緒に現場で作業する他企業から頼りにされることもあります。一般家庭に訪問してお話しすることもあれば、企業の幹部以上の方とお話しできるのも魅力です。
また、電気が流れる前の施設が通電後に動いているのを見るのもやりがいに繫がります。
飲食店や病院など多くの施設が通電するまでの過程を見られるため、施設が完成する度に社会への強い貢献度を感じることが可能です。
非常に幅が広く、多くの場面で役立てる電気主任技術者は、実際にやりがいのある仕事といえるでしょう。
電気主任技術者を目指す方へ
最後に電気主任技術者を目指す方へお伝えしたいのが「電気主任技術者は技術者としてだけでなく、社会人としても必要な力が身につく仕事」ということです。
先ほど解説したとおり、電気主任技術者として従事するためには電験三種の合格又は認定取得をする必要があります。試験は難易度が高く認定取得は実務経験を要するため、どちらも短期間でこなせるものではありません。
そのため、電験三種を取得したことで従事できる電気主任技術者は、電気に関する知識が優れていることの証明にもなります。
ただし、それだけでは不十分です。前半・後半にて解説したとおり、仕事の中でコミュニケーション能力が必要不可欠なためです。
自身の行動と発言に責任を持ち、柔軟な対応と人間性が求められます。そのため、社会人としての必要なマナーも身につけられる職業です。
加えて、これまでに身につけた知識や技術力も仕事を通して更に高められるため、非常に良い経験を得られる職業といえます。
電気業界での転職を検討している方は、是非、電気主任技術者を目指してください。
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