コラム 建築技術者が書く、リアルなお仕事コラム。
一般住宅(木造)の施工管理業務
高気密・高断熱化の進む一般住宅。インターネットや書籍で情報が容易に入手できるようになった現代では、施主側の知識も日々向上してきています。コンプライアンスを守りつつ、高品質な住宅の提供が望まれています。
昨今、高品質な建物が供給される風潮があり、施工不良や瑕疵に対する視線は厳しくなっています。一般住宅では、構造に影響し目に見えて分かりやすい「木材の雨濡れ」に注意を払う必要があります。
木材の雨濡れ自体は対処法も確立され問題ないレベルに抑えることができますが、問題なのは会社全体のイメージや営業・設計に対する損失です。SNSで「炎上」というキーワードを聞いたことがあるでしょう。昔から「悪事千里を走る」と言われますが、施主にとって「悪い印象」は瞬く間に拡散し、自社のブランドを損ない利益に直結します。
高品質な建物を作るには施工計画と準備が欠かせません。それを十分に実現させるには組織力が必要です。
一般住宅の管理方法の要点
昨今の木造の施工管理業務は、躯体をいかに雨に濡らさないよう管理できるかが重要です。
できるだけ早く屋根を掛け、外壁に防水シートを貼り、バルコニーやパラペットの防水層を作り上げます。雨が降りそうなときはブルーシートで被うなどの仮設処置も必要でしょう。
躯体を濡らさないようにするには施工方法・施工手順の検討も必要です。短期間で外部の防水を手戻り無く完成させるには標準施工や品質管理方法を定めておく必要があります。これを組織として行っていくには個人スキルに依存せず、知識を共有し、技術を広めていく必要があります。
短期間で防水を完了させるための施工計画と準備
短期間で防水工事を完了できるよう、施工計画と施工準備をしておきます。
施工計画は仮設計画や雨養生、防水施工のタイミングなどを考えて行います。季節ごとの天候の特徴や移り変わりも把握します。
屋根のルーフィング、外壁の防水紙、パラペットやバルコニーの防水施工が完了して入ればまずは安心です。特に屋根のルーフィングは、野地施工後、すぐにしてもらえば多少の雨なら建物が濡れることもありません。
防水層を施工するバルコニーやパラペットは、サッシとの納まりの事前検討が要です。防水を先行させるか、サッシを先行させるかはよく検討しておきます。
工事中の管理方法の選定
防水工事が完了するまで、雨養生をどこまで、どのように行うかも検討しておきます。
無垢の土台・柱・梁材は多少水に濡れても問題ありませんが、合板類は水濡れで不具合がでます。特に、床合板は水が溜まりやすく乾きにくいので管理を徹底します。
防水が完了するまで全面をブルーシートで被う方法は雨対策として最良の方法ですが、施工のための上げ下ろしなどに手間が掛かります。無駄な手間を嫌うのは職人の性です。指導と手間賃の両方が必要です。
協力業者への指導と信頼関係
実際の雨養生は協力業者、特に大工さんにやってもらうことになります。
故に大工さんと協力関係は必要です。事前打ち合わせと養生材の準備、要点の指示と指導、手間の支払いを押さえておくことで信頼関係を築けます。しっかりとした信頼関係が構築できていれば、多少の無理も聞いてくれるかもしれません。
一般住宅の施工管理のこれから
これからの木造住宅の施工管理は組織力が重要な時代に突入します。
労働力の減少、部材の規格化、品質要求の向上が重なり、個人スキルで埋めるには少々骨の折れる時代になりつつあります。スキルの高い人を確保するならば問題なくこなせるかもしれませんが、それでは特定個人に依存した組織ができあがり、欠員が出た場合に簡単に崩壊します。個人のスキル不足を補う形で、組織力を高めていく必要あると考えています。
具体的には以下の3点が重要になるでしょう。
1.社内教育制度の制定
2.社内の標準施工要領書の作成
3.社員のマネジメント能力の向上
社内教育制度の制定
組織力を上げるのに、最も重要なのが社員教育です。これは経験の浅い人に限らず、ベテランのスキル向上にも効果的です。
社員教育で最も伸びるのが「計画」に関する部分です。施工管理は計画に関する部分が大半を占めます。昔から「段取り8分仕事2分」というように、実際の現場での施工は2分程度、その前段階の計画で現場での施工品質、進捗状況などが決まります。
1週間に1回、30分程度でも十分効果があります。朝礼や夕礼の代わりに開催しても良いでしょう。
社内の標準施工要領の作成
標準施工要領の作成の大きなメリットは施工計画の立案のし易さと、施工品質の向上にあります。
地盤調査に始まり、必要に応じて地盤改良を立案し、基礎の設計を行います。軸組の架構計画を作り、設備系の配管・配線、内装・外装の作成、住設の取付など。各工程の重要な部分だけでも標準化しておけば施工計画の立案がしやすく、不具合も少なく、施工品質の向上に繋がります。
また、構造に関連する部分はどこまで施工誤差を認めるかと、不具合が出た場合の手直し法も選定します。
さらに、昨今の住宅は規格部材の組み合わせでできています。住設はもとより、木材や金物も規格品です。標準を定めることは自社で利用する規格部材の情報が集まりやすく、取説では見えない施工情報と不具合の情報をより多く集めることができます。
社員のマネジメント能力の向上
最後はマネジメント能力の向上に関して、これは建設現場を治める者として必要です。現場を動かす能力そのものです。
建設は、どんなに規格化・機械化が進もうとも、結局のところ「人」が作ります。現場代理人には人を束ね現場をまとめる能力が不可欠です。建設業で必要なマネジメント能力は多岐にわたり、職人の管理の仕方、発注の交渉、現場の運営などが代表されます。巷で良く言われているコミュニケーション能力はマネジメントの一分野です。
マネジメント能力を最後に掲げたのは、前記の教育制度と標準施工要領の選定がマネジメント能力に大きく影響している為です。少なくとも現場を効率的に運営するためには前提となる計画と知識が欠かせません。明確な目標や指針があって、初めて生かされます。
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