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技術士(建設部門)の資格について

2022.08.29

技術士(建設部門)という資格をご存知でしょうか。

技術士とは、文部科学省所管の国による認定資格で、「科学技術に関する技術的専門知識と高等の応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた優れた技術者」のことです。簡単に言うと、専門技術に関して高い能力と実務経験を保有し、かつ高い倫理観を持つことを国から認定された技術者のことです。

建築業界の中では比較的保有率の低い資格ですが、上記のようにレベルの高い技術者であることを国から認定された社会信用性の高い資格です。

今回は、技術士(建設部門)の概要と筆者の取得時の体験談についてご紹介します。

技術士試験の内容

技術士になるまでのフローは以下の通りです。

①技術士第一次試験の合格、または指定された教育課程の修了
②習得技術者として実務経験を積んで第二次試験の受験資格を取得
③技術士第二次試験の合格
④技術士への登録

①技術士第一次試験

択一式の試験で行われ、内容は科学技術全般にわたる基礎知識に関する基礎科目、技術士法に関する適性科目、専門分野に関する専門科目で構成されています。

また、文部科学大臣指定の教育課程を修了することで第一次試験合格と同等とみなされます。筆者の場合は、この認定制度を利用しました。

②実務経験

第一次試験合格後、習得技術者として以下のいずれかの実務経験を積むことが必要となります。ただし、(3)については習得技術者となる前の実務経験も含めることができます。また、大学院修士課程も2年を限度に含めることができます。

(1)技術士補として、技術士の下で4年を超える実務経験

(2)7年を超えて業務に従事する上司の下で4年を超える実務経験

(3)7年を超える実務経験

③技術士第二次試験

筆記試験と口頭試験があり、筆記試験に合格すると口頭試験に進むことができます。

筆記試験は建設部門の場合は論文形式の記述式で、技術部門全般に関する必須科目1問と専門分野に関する選択科目2問の合計3問となります。(令和4年度時点)

口頭試験では、技術士としての適格性に関して問われます。

④技術士への登録

第二次試験合格後、国に登録を行うことで、技術士と名乗ることができます。なお、一級建築士のような更新制度はありません。

試験の難易度

<第一次試験>

第一次試験の対受験者合格率は令和3年度時点で約40%ですので、それほど難易度は高くないと言えます。過去問をきちんと勉強すれば合格はそれほど難しくないでしょう。

<第二次試験>

第二次試験の対受験者合格率は約10%と非常に低いです。難易度は非常に高いと言えるでしょう。特に筆記試験の難易度が高く、合格することは狭き問となっています。逆に筆記試験さえ合格してしまえば、口頭試験では、よほど大きな失敗をしない限りは合格することができます。

筆記試験の必須科目では、科学技術全般に共通する地球環境問題や労働力不足、社会インフラの老朽化など、社会的な課題に対して課題とその解決策を述べることが求められます。選択科目では、自身の選択した分野に関する専門的な設問と、社会問題に対して、その知識を応用した課題抽出、その解決方法、解決方法に対するリスク評価を述べることが求められます。

第二次試験を受ける方であれば、基本的に4年以上の実務経験がある方ですので、多くの方は技術レベルについては問題ないと思います。筆記試験のポイントは、自らの知識を特定の問題に対して応用し、課題解決を行い、また自らの解決策の問題点も含めて評価を行うということを、定められた時間の中で簡潔に文章にまとめることだと考えます。つまり、皆さんが普段業務で行っていることを、文章でわかりやすく試験官に伝える必要があるのです。

口頭試験は受験申込書や筆記試験で記述したことや技術士法に関する内容を面接官から質問されます。落ち着いて質問に回答すれば、それほど難しい試験ではありません。

筆者の体験談

筆者は、1回目の試験では筆記試験で不合格となり、2回目の試験で合格しました。合格したときの年齢は29歳でした。合格者の平均年齢は43歳程度ですので、比較的若い方だと思います。逆に言うと、その程度の実務経験でも十分合格が可能ということです。

筆記試験対策としては、新たな知識を習得するというようなことは行っておらず、普段自分が業務で活用している知識を整理するということを行いました。筆者は鋼構造部門で受験したため、具体的には、鋼材の種類ごとに特性やどのような構造物に適しているか、設計する上での注意点などをまとめました。また、過去問より、「地球環境問題」、「インフラの老朽化」、「労働者不足」などの社会課題に対して、自分だったらどのように解決するかをまとめました。

筆記試験対策では、限られた時間と文字数で考えをまとめるという練習も必要となります。1回目の試験では、書くべき内容と文字数のボリューム感の関係が掴めていなかったことが不合格となった理由だと思います。2回目の試験では、この内容を記述するにはこれくらいの文字数が必要ということを理解していたため、スムーズに記述することができ、必須、専門ともにA評価でした。筆者は対策として論文を作成するということは行いませんでしたが、初めて受験する方は一度は作成することをおすすめします。

口頭試験対策では、筆記試験で記述した内容に改善点はないかの深掘り、技術士法の理解、受験申込書に記載した業務内容の詳細に関する整理を行いました。業務内容の詳細は口頭試験で必ず質問される内容ですので、申込みをする時点で口頭試験を見据えて記述するようにしましょう。試験官からの質問では、自分の記述した内容と異なる見解について意見を求められました。実務での回答は一つではありませんので、自分と異なる見解も認めつつ、自分はなぜこの回答を選んだのかということを説明することが必要となります。

最後に

技術士という資格は、一級建築士のように独占業務があるものではありません。しかし、国から認められた高い能力を持つ技術者であり、社会からの信用性は非常に高くなります。建築業界では保有している方が少ないということもあり、転職する際には大きな武器となります。

合格率は低いですが、決して取得できない資格ではありません。ぜひ、取得してキャリア形成に役立ててはいかがでしょうか。

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