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エレベーター式立体駐車場の構造設計とは?
エレベーター式の立体駐車場は機械設備だというイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。
マンションでよく見られる高さが2~3段程度で、屋根も壁もない機械式駐車場は確かに機械設備です。
しかし、ビルやホテルなどにあるエレベーター式の立体駐車場は屋根も壁もあるため建築物とみなされ、一般的な建築物と同様に確認申請が必要です。
機械設計も必要なため、ゼネコンやハウスメーカーなどの建築系企業が自社で設計することはありません。
この記事では、じっさいにエレベーター式立体駐車場の構造設計に携わっている筆者が、その業務にについて紹介していきます。
エレベーター式立体駐車場の構造設計業務内容は?
エレベーター式の立体駐車場の構造設計業務は、一般的な建築物とは少し異なります。
・エレベーター式立体駐車場の構造形式
・1案件あたり1週間程度で構造設計は完了
上記について、詳しく紹介していきます。
エレベーター式立体駐車場の構造形式
エレベーター式立体駐車場は鋼構造で、ピン接合のブレース構造です。
高さは15mほどの低いものから、60m近くのかなり高いものもあります。
・
・高い立体駐車場は塔状比が6~8程度となることがある
・高さに関わらず全層吹き抜け構造
・建築物でありながら大臣認定を取得した機械設備でもある
など、一般的な建築物ではあまりみられない特徴をエレベーター式の立体駐車場は持っています。
1案件あたり1週間程度で構造設計は完了
エレベーター式立体駐車場の構造設計にかかる時間は短く、特殊仕様がないものであれば1案件あたり1週間程度で完了します。
構造がシンプルでどの案件でもベースは同じなので、構造計算システムを流用できるためです。
正式に受注していない案件でも建築申請までする必要があるので、かかる時間は少なくても多くの案件をこなさなければいけません。
多いときは月に10件以上の構造設計をすることもあるので、建築設計の中でも少し特殊な分野です。
エレベーター式立体駐車場の構造設計で楽しいところ
エレベーター式の立体駐車場は一般的な建築物と異なる点が多くあるので、独特の楽しさがあります。
・短期間で多くの構造設計が経験できる
・建築物でありながら機械設備でもある珍しい建物
それぞれについて、詳しく紹介していきます。
短期間で多くの構造設計が経験できる
エレベーター式立体駐車場の構造設計で楽しいところは、短期間で多くの構造設計が経験できるということです。
物件をこなす度に改善点が見つかるので、どんどん仕事の効率が上がっていくことが実感できます。
構造計算システムはエクセルがベースなので、マクロにより仕事を自動化して設計工数を大幅に削減できた時などは達成感がありますよ。
大きな建築プロジェクトを数年かけて完成させることはありませんが、短期間で多くの構造設計を効率的にこなすことに楽しさを感じます。
建築物でありながら機械設備でもある珍しい建物
エレベーター式立体駐車場は、建築物でありながら機械設備でもある珍しい建物です。
機械設備の設計は他の部署が担当するので、直接関わることはほとんどありません。
しかし、建築の設計を進めるにあたっては、機械部分の仕組みも理解しておく必要があります。
一般建築物の設計ではほとんど関わることがない分野なので、新鮮で楽しく感じています。
建築系の部署に所属していますが同僚は車や機械好きの人が多いので、建築以外の話もできて楽しいですよ。
ただ、エレベーター式の立体駐車場の構造設計をしていて、以下の点においては楽しくないなと感じてしまうところがあります。そこも正直に書いておきます。
似たような物件ばかり
エレベーター式立体駐車場の構造設計は、似たような物件ばかりで飽きてくることがあります。型式や収容車台数によって多少の違いはありますが、基本的にはピン接合のブレース構造です。
また、木造や鉄筋コンクリート造の設計をすることが全くなく、鋼構造のみの設計しかできません。
多くの案件を短期間で経験できるメリットもありますが、他分野の構造設計をやってみたく思うこともあります。
何度も仕様変更を求められる
一般的な建築物の構造設計でもおなじみかと思いますが、施主の要望などで何度も仕様変更を求められることがあります。
申請済みの案件でも関係なく、計画変更をして再度申請するといったことは少なくありません。
同じ案件を何度もやり直すのは楽しくないので、可能であれば避けたいものですが、エレベーター式立体駐車場は一般的な建築物よりも構造設計にかかる手間が少ないので、特に仕様変更の要望を受けやすい傾向があります。
まとめ
エレベーター式の立体駐車場は、機械設備でありながら建築物でもある珍しい建物です。
建築系の企業で設計されることはなく、機械系のメーカーで取り扱われています。
月に10件以上対応することもあるなど、一般的な建築物の構造設計とは少し間隔が違うかもしれませんね。
一般的な建築物の設計経験はもちろん活かせるので、興味がある方は転職を検討してみてはいかがでしょうか。
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