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一般住宅の修繕・改修工事の仕事

2022.09.20

建築施工管理に聞いた「一般住宅の修繕・改修工事における業務」

一般住宅の修繕・改修工事は、施工管理を行う者、つまり現場監督が中心になって動くことが大半です。修繕・改修工事の現場監督には営業・設計・積算・施工の分野を横断する業務と、それに伴う知識が必要になります。当然、古い建設の知識も必要で、それが改修工事の仕上がりを左右します。

建設業界の中でも、修繕・改修工事の監督がツライと言われる部分がここにあります。とにかく業務量が多いのが特徴です。

それでも、修繕・改修工事の仕事は大変楽しい仕事です。なにより「人の困っていることを解決する」「人の役に立つ物を作っている」という結果が目に見えて分かります。依頼主の心境が良い方向に変化していくのが分かるのも私は嬉しく感じます。

「人の喜ぶことをする」と昔教わったことがありますが、修繕・改修現場の監督はそれが目に見えて実感できるのが何よりも良いと思います。

(以下、修繕・改修工事をリフォーム工事とします)

なぜ営業・設計・積算・施工の分野を横断するのか

リフォーム現場の監督が営業・設計・積算・施工の分野を横断する知識と技術を身につけるには訳があります。一つは金額の問題、もう一つが手間の問題、最後が組織の問題です。

リフォーム工事の1件あたりの規模はいかほどか?

まず、なんだかんだ言って1現場あたりの規模や金額が建設業のなかでは最小です。そのため営業や設計を入れる余地が少なく、業務も煩雑になるため、必然的に施工管理士が一人で行います。

TVでやるような匠が入り、躯体を残したフルスケルトンの業務を行う現場は極わずです。営業がついたり設計がついたりするような物件は全体の10%~15%程度という実感があります。残りの80%以上が500万円未満の小規模な工事です。

小さな工事では営業・設計が入る余地が少なく、施工管理士が一人で複数を兼務する必要があります。

手間の問題

手間を減らし、効率よく仕事をするには現場調査の回数は少なくしたいところです。

リフォーム工事は下見が必要です。現状を確認し、希望に添う仕上がりになるように見積もりを作ります。小さな工事に3回も4回も下見をしては大赤字。手間を減らすには初回から工事を行う現場監督が訪問した方が効率よく動けます。

1現場あたりの規模が小さく、経費節約の意味もあり、必然的に営業・設計・積算・工事を一人でこなすことになります。

組織の問題

組織の問題は少々複雑です。収益構造や力を入れる部分が企業によって異なるので、すべての企業について当てはまるわけではありません。

覚えておきたいのは、リフォーム工事の粗利は30%前後ということです。利益も5%程度というところも珍しくありません。500万円の工事でも15万円ほどの利益です。小さな工事で利益を集めるには現場監督が営業や設計も兼ねなければ、組織としてやっていけないという実情もあります。

大きな組織であれば専門の営業や設計が在籍するところもあるでしょう。大きなリフォーム工事は施主様との折衝や各種手続き、申請などが煩雑になり、専門で対応する人が必要ですし、人を回せるだけのパワーがあります。

収益構造から見ても、小さな企業や組織ほど現場監督が多くの業務をになう必要があります。

リフォーム工事の計画

話題を切り替え、リフォーム工事の計画についてお伝えします。

ある住宅の水回り(お風呂・トイレ・台所)の工事をお願いされました。あなたがまずやるべき事は何でしょうか?

何年か前の研修時に出される問題の一つです。このときの研修は非常に良かったのでぜひ共有したいと思います。

まずやるべき事はなにか?

この時は「現調へ伺う」「カタログを用意する」「施主に電話してアポを取る」などの様々な回答が出ていました。

ちなみに答えは「計画を立てる」。リフォーム工事はいきあたりバッタリでは成功しません。計画がなにより大切なのです。

ここでも現場監督は重要な役割を果たします。初回訪問前にはざっくりの内容から全体の工期が予想できます。打ち合わせを兼ねて現調した際にざっくりと部屋の中を見渡せばおおよその難易度や施工計画が立案できます。そうすれば全体の計画がよりはっきりするし予算の目処もついてきます。

困っていることを訊く

この世界、工事や施工管理は得意だが、営業が苦手という人は案外多い印象があります。皆さん、口下手、あまり話が得意ではないと本人は思っているようです。

一般住宅のリフォーム工事では現場監督が営業や設計も兼ねますが、その際施主様との折衝が必要です。

施主の要望を十二分に聞き出すには、ある程度話が進んだところで以下のように切り出すのが効果的です。

「ところで、いま一番困っていることはなんでしょうか?」

こう尋ねると、案外本音が出てきます。

例えば、お風呂の改修をしたいという要望があって伺う。施主はあれやこれやと要望を出してくるので、相づちを打ちながら一通り伺います。施主の要望が出し切って一息ついたところで「ところで、いま一番困っていることはなんでしょうか?」という質問を投げかけてみましょう。きっと、少し考えた後に回答が出てきます。

一番困っていることを解決するように計画を立てればリフォーム工事の大体は上手くいきます。施主の要望に添わない場合でも代案も考えておけば悪い印象を持たれません。

営業や設計も、施工と同じように手順があります。「施主が困っていること」を解決するように計画すれば口下手でも、話が得意でなくても大丈夫です。

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