コラム 建築技術者が書く、リアルなお仕事コラム。
FMに転職したい方必見、今後求められる知識やスキルなど
FM(ファシリティマネジメント)について興味があり転職を考えている人向けに、今後この業界で求められていく知識やスキルについて3つご紹介します。企業によってはまだ積極的に取り入れられていないような分野のスキルかもしれませんが今後ほぼ間違いなく注目されるものばかりであると思いますのでぜひ参考にしていただければと思います。
環境
SDGsなどが謳われている昨今、古くなった建物はとり壊してして新しいものを建てようという「スクラップ&ビルド」や工事費や材料費などなんでも安く済ませようといった「安かろう良かろう」という考え方は時代と共に変化してきています。まだ使える施設や設備機器を廃棄せずどのようにして長く使い続けていくか。
会社組織の現場のベテラン層もこれまでにあまり積極的に取り組んできた分野ではなかったため、「環境」とは企業にとって未知なる分野であることが割と多い印象です。ですので、若い人でも環境に対する知識や学習意欲があればこれから活躍していける可能性を秘めています。
バブル時代などに乱立した日本中のビルなどの建物は築40年を超えるものが年々増加しています。建物寿命が近づいてきた建物に対し、ただ取り壊して更地化するのではなく、リフォームやリノベーションを通して長く使い続けるにはどうすればいいのか。産業廃棄物を減らす工夫をして環境問題とどう向き合っていくのかが、今後のFMに与えられた使命であり、課題となっています。
こういった環境問題に向き合っていくということは一朝一夕では解決し成し遂げることはできないものです。今から何ができるのかコツコツと準備をしていく必要があります。
私の企業の場合であれば施設設備の故障修繕や予防保全による機器を更新する時には元の型番やその後継品、より安いものを単に選ぶわけではなく、省エネタイプのものやSDGsに何か関わる付加価値をもつものを積極的に選ぶように心掛けています。短期的には元の型番、安いものを選んだ方が手間もコストもかからずメリットが多いように見えます。しかし、長期的にみれば省エネタイプやSDGsに関わる付加価値をもつものを取り入れて行った方が環境問題に積極的に取り組む企業として確実にプラスに働くと考えています。
また、私の企業の施設では雨水を地下槽に溜めておき、それをろ過し中水としてトイレなどの洗浄水に再利用するといった設備も導入しております。工事にはやメンテ費用が掛かりますが長期的にみると水代の節約が大幅に見込めランニングコストも設備導入をしないよりもコスト削減できるということがわかり導入しました。
このように、会社組織として環境問題に取り組むには私たちのようなファシリティマネジメントに関わる人たちが声を上げていくことで推進していくものだと思います。
エネルギー
「2050年カーボンニュートラル宣言」という言葉は皆さんもご存じかと思います。
二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡化を目指し、差し引きゼロにしようとする施策です。人間社会の活動において温室効果ガスの排出そのものをゼロにするというのは現実的に難しいですが、使用するエネルギーの消費量の削減をするなどをしながら、森林などの保全により吸収・除去量を促進させニュートラル(中立)の状態にもっていきます。
上記のような「カーボンニュートラル」を踏まえ省エネ、創エネ、蓄エネといった技術が以前よりもさらに注目されるようになります。
創エネといえば再生可能エネルギーによる発電があります。例えば下記のようなものです。
・太陽光発電
・風力発電
・地熱発電
・バイオマス発電
などは有名なところかと思います。
最近では
・床発電(人が通行する振動をエネルギーとして利用する技術)
・海洋温度差発電
・音力発電
といったあまり聞き慣れないような新しい再生可能エネルギーも生まれており、
今後はより斬新な原理からでエネルギーを生み出すような技術が誕生するかもしれません。
このようにエネルギーの分野に明るい方も企業がエネルギーについての世の中の流れに遅れをとらないようにするために喉から手が出るほど欲しい人材です。
私の職場でも省エネ・創エネ・蓄エネについて何か企業として導入できないのか、よく会議の議題で取り上げられます。例えば海水温度差を発電実用化しており、周囲の企業に売電している企業があるため、そういった電気事業者から電気を引き込めないか検討したり、テナントの飲食廃棄物のような生ごみをバイオマス燃料として自家発電できないかといったことが話し合われています 。
また、会社の付近はビルの隙間風がいつも強いので風力発電が導入できないか、といったことも検討しています。
情報
ここでいう「情報」とは企業の施設や設備機器について情報システム機器を活用して常時監視し、最適な状態で維持管理をおこなうためのデータ管理することなどを言います。FMにとっては施設の現状や実態を把握するということは必要不可欠なものです。
例えば施設内の部屋ごとの空調や照明を使用する頻度、部屋の室温や湿度などのデータを日々保管し蓄積させていく運用方法があります。そこでは他にも機器のメーカーや型式、耐用年数や購入金額、見積金額、機器の故障履歴や業者発注金額などといった情報などもすべてデータとして保管します。こういったデータを蓄積し、得られた統計を分析し、現状把握と今後の施設の在り方について改善点など新たな発見を得ることができるのです。
上記のようなデータを活用しない運用というのはFMにとって施設の現状の実態がつかめず、空調や照明などの設備を十分に管理できずエネルギーの無駄遣いや予期せぬ故障が頻発したりと、FMとしての役割を果たせなくなってしまいます。
また、得られたデータなどはただ蓄積していけばいいということだけではなく、目的の情報を欲しいタイミングでスムーズに得られるようしっかりとデータベース化して整理しておく必要があります。
このように、FMではデータを適正に管理し膨大なデータから必要な情報をスピーディーに取り出し、正確な情報を読み解くというスキルが必須なのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は今後FMで求められるであろうスキルについて「環境」「エネルギー」「情報」の3つをテーマにご紹介しました。
他にもFMにとって求められるスキルは多々あり挙げるとキリがないのですが、私の日々のFM業務において特に最近取り上げられる分野についてのご紹介でした。
FMに興味をもち、転職をお考えの方がいらっしゃいましたらこの3つの知見について今からでも磨いておくことをおススメいたします。
コラムアーカイブ
- 1級管工事施工管理技士について、資格取得者が語る勉強方法など 1級管工事施工管理技士資格とは こんにちは。設備工事会社で空調・衛生・消火の施工管理をしてい...2023.09.12
- 建築物省エネ法について:設備施工管理のポイント 平成27年7月に【建築物のエネルギー消費性能向上に関する法律(建築物省エネ法)】が制定され、その規...2023.09.05
- 建築技術者が担える「営業」の話~信頼と受注の相乗効果~ 建物の建設時における工事種別は大きく建築工事・建築設備工事の2つに分けられ、建築設備工事の中でさら...2023.08.29
- 建築設備(機械)設計担当で成長できたこと 建物の建設時における工事種別は大きく建築工事・建築設備工事の2つに分かれ、建築設備工事の中でさらに...2023.08.22
- 設備施工管理が教える「受注側」と「発注側」の違い 建物の建設時における工事種別は大きく建築工事・建築設備工事の2つに分けられ、建築設備工事の中でさら...2023.08.08