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工事監理、実務とそのポイントをまとめてみた

2023.07.11

本日は工事監理についての一般的な実務内容と、工事監理業務を主とする私自身の経験を踏まえてお話ししたいと思います。

工事監理とは

工事監理は、建築士法の中で「「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」と規定されています。

建築主は、工事をする場合、建築士である工事監理者を定めないといけません。(建築基準法 第五条の六)

工事を行う上では、工事監理を行う工事監理者が必要となりますが、資格を必要とする業務であることから、資格を有する建築士の独占業務ということになっています。

工事監理の具体的な内容

以下が工事監理業務の標準業務として、国土交通省が定めているものです。

(詳しくは国土交通省ホームページ等でご確認ください。)

(1) 工事監理方針の説明等

(2) 設計図書の内容の把握等

(3) 設計図書に照らした施工図等の検討及び報告

(4) 工事と設計図書との照合及び確認

(5) 工事と設計図書との照合及び確認の結果報告等

(6) 工事監理報告書等の提出

上記を踏まえ工事の進捗に伴い、以下の業務を行います。(代表となるような業務を抜粋)

1)施工者が作成する工程計画(工程表)確認
2)施工者が作成する施工計画(工種別の施工計画書を確認
3)施工さが作成する施工図(躯体図、サッシ図等)を検討し、承認。
4)工事の確認(施工プロセス、工種別の施工結果の確認)
5)建物完成の確認(自主検査実施、行政検査・建築主検査に立会等)

工事監理業務の内容・流れについて

次に工事監理業務の大まかな流れと、その内容についてお話したいと思います。

①設計図書・確認申請等、許認可書類の内容を把握する。
設計者が設計業務に続き工事監理業務を行う場合、設計図書の内容は当然理解していますが、改めて別の担当者が工事監理業務のみを行う場合は、初めて工事監理者は設計図書を見ることになります。設計図書から、計画の内容はもちろん、仕様、要求されている品質等、設計者の考えを把握する必要があります。また確認申請はじめ、許認可関係の書類を確認し、法律的に厳守しなければならないポイント、必要な検査、届出等の内容を確認します。

②工事監理方針、工事監理計画の策定
上記を踏まえ、工事監理方針・計画と報告方法を建築主に説明します。また着工前に施工者に施工図等の提出・検査スケジュールを受領し、それらを明記した総合工程表を確認・承認します。

③施工図等の承認・現場立ち合い検査
現場の進捗に合わせて以下の業務を行います。

・施工計画書・要領書の承認
・材料の受入検査の立ち合い、確認
・施工図の承認
・工程内検査の立ち合い
・施工結果の確認(合否の判定)
上記内容は、工事監理計画・総合工程表に沿って行い、スケジュールに遅延なく行います。

④各種打ち合わせ、定例会議
必要に応じて、施工者・協力業者と行う定例会議、建築主に工事施工状況・工事監理状況を報告する定例会議を行う場合もあります。建物に関する変更が出る場合もありますので、建築主、設計者に確認をとりながら対応します。

⑤行政検査、施主検査
監理者としての自主検査に加え、行政の中間検査、完了検査、消防検査など案件ごとに受けなければならない行政検査の立ち合いを行います。また引渡し前には建築主の検査に立ち会いを行います。

工事監理のポイント

実際に工事監理を行うにあたり、注意すべきポイントを挙げたいと思います。

①正しく、設計図書の内容が把握されているか。
設計事務所、または設計・施工を請け負うゼネコン・ハウスメーカーは、設計者と監理者が同一である場合が多いですが、工事監理者が設計者と異なる場合、特に設計図書の内容を正しく把握しないと、その案件の監理する上での注意するポイントが理解できず、施工者への注意喚起が行えません。設計者との連携をとり、工事監理を行うことが重要です。

②確認申請・許認可内容の理解
行政の許認可関係は、この許認可の内容通りに工事を行えば建築しても良いですよ、という許認可になります。当然、違反すれば検査済も取得できず、引き渡しもできません。建築用途、規模によっては、確認申請だけではなく、様々な許認可の内容が複雑に絡み合ってきます。これらの見落としが発生すると、許認可内容の変更対応が発生するどころか、場合によっては工事のやり直しにもつながることにもあります。また許認可上の厳守しなければならない内容について、設計者・監理者は把握していても、施工者はあまり重要視していないケースが多いです。現場の納まりの都合で細かな寸法を変更してしまうこともあり、避難通路等の幅員がとれない、といったトラブルにもつながります。

③建築主の要望を踏まえた監理
昨今、インターネットの普及に伴い、建築に関する知識が取得しやすくなっています。環境に関する意識、資材高騰、コロナ渦における生活環境の変化、建築に関する建て主の要望も細かくなってきており、建築主の要望が満たされているかというところも重要な監理のポイントであると考えます。これは設計者の仕事と思われがちですが、施工者であれ、監理者であれ、建築主はお客様であることを忘れずに、このあたりも気を付けて対応していく必要があります。

実務を通して感じること

工事監理は、一級建築士の資格があれば意匠設計の方以外でも行える業務です。例えば施工管理の経験のある方は、施工図・現場を見慣れていることから、施工図や現場で起こっている不具合を発見しやすいかもしれません。構造設計者であれば、構造関連の監理を専門に行い、同様に設備設計者は設備の監理のみを行う場合もあります。代表となる工事監理者として業務を行う場合は、各セクションで起こる問題を総合的判断し、対応していく力が求められます。

いかがでしたでしょうか。一級建築士の資格を用いた業務として、工事監理業務をご紹介させて頂きました。意匠設計者だけでなく、構造・設備設計、もしくは施工管理を経験されている方も、資格を所持した上で工事監理業務を行っておられます。これから新たに工事監理を業務として検討されている方に、少しでもお役に立てれば幸いです。ここまでご一読頂き、ありがとうございました。

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