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設備施工管理が語る「施工会社から総合デベロッパーへ転職した話」

2023.08.01

建物の建設時における工事種別は大きく建築工事・建築設備工事の2つに分かれ、建築設備工事の中でさらに電気設備工事、機械設備工事に分けられます。私は機械設備工事に新卒から12年間従事してきました。機械設備工事の設計担当者での経験(リンクをお願いします01)や施工管理担当者での経験(こちら・リンクをお願いします)があります。今回は転職をして建物の企画運営までを行うデベロッパーへの転職した経験をお話したいと思います。

転職をしようとしたきっかけ

 新卒で大手設備施工会社に入社した私は、設備設計、設備施工管理を数年担当しました。

先輩の力を借りずにようやく一人で仕事を完了できるくらいになってきた時に、もっと多くの建物や設備に触れてみたいと漠然と感じるようになりました。

設計担当であれば、規模にもよりますが、数か月間時間をかけてじっくりと詳細設計をして一つの設計図書を完成させます。また、施工管理担当だと着工から竣工まで数年かかる場合が普通です。

そのため40年同じ会社に勤務した場合、キャリアアップ(管理職等になった場合)を考慮すると私自身が担当者として関われる物件の数は、せいぜい20~40件程度の計算になります。1件1件こなしていけばとても成長できるし技術の習得も可能ですが、私にはとても少ない数に感じました。もっともっと多くの建物や建築設備に関わりたいと思ったことがきっかけで、転職を決意しました。

 半面、それ以外に不満に感じることなどは特になかったため、転職を焦る気持ちはありませんでした。1~2年の内に転職できたら良いなと思いながら、ゆるく転職活動をすることを決めました。

具体的な転職活動について

設備設計や施工に同時に何件も関われたらいいな、というのが私の第一条件でしたので、設計監理や監理を主に行える仕事を探すことにしました。

会社を探す比重を置いたのは以下の二点です。

・多くの建物に関われること

・私が経験してきた仕事がとても役に立ち即戦力としても会社へ貢献できること

職種・業種を絞り込んだ後は、求人サイトで探し続けましたが、自分の条件に合う求人は全く募集を見つけることが出来ませんでした。3か月探し続けたにも関わらず全く成果が無く、このままでは1~2年どころかずっと転職できずに終わると私の中で焦りが少々出てきました。そのため、求人サイトを利用するのではなく、自分で企業のHPを覗いて探すことをしました。この時は、求人サイトに記載されている会社であることや、中途採用を行っているかいなかの点は考慮せずに、自分の興味のある会社をリストアップして1社ずつHPの採用情報欄を確認していきました。リストアップした後、各社のHPの募集要項を確認し、募集が載っていた場合、迷わずに応募書類を提出しました。結果2社応募することができて無事に面接まで行くことができました。

面接から内定まで

私なりに考えた戦略は、できるだけ面接官にポジティブな印象を受けていただくというものです。声のトーンや言葉遣い、表情などにもできるだけ気を付けました。

また、質問には面接官への回答とプラスアルファで自分の良い点をアピールできるように心がけました。面接当時の質疑応答の一部を下記に記します。

面接官:あなたは弊社に入社したらどのようなことができますか?

私  :設計経験があり様々な設備について設計することができます。また既存設備で不具合が生じた場合でも設計的観点から分析し、問題解決をすることができます。

面接官:設計できると言うがCADは使用できるのか?

私  :もちろんCADは使用できます。しかしCADは図面を描く為の道具の一つにしかなりません。また建築図面には多くの線が書いてありますが、線1本1本全てに意味があり設計者の意図が細かく組み込まれています。
そのため私は図面の中の線1本1本の意味を含めて私は図面を書くことができますし、他の図面を見た時に図面から設計者の意図するもの読み解くことができます。

このように、私が持っている知識や経験を最大限提供できることを相手に伝えて、理解いただけるようにしました。私の場合は面接を2回行った後、内定を直接電話でいただくことができました。

内定を貰った電話で「来月から直ぐにでも来ても欲しい」と打診がありましたが、そこは今までお世話になった会社への義理もありますので3か月猶予が欲しいと回答しました。そのため転職前の会社へは3か月後の退職を伝え、後任者との引継ぎ期間を設けていだだきスムーズに退職することができました。

役にたった資格

私は新卒入社した会社の在籍時に、自分の勉強のために資格を2つ取得しました。一つは設計的知識が必要な「エネルギー管理士」、もう一つは工事担当者では必須と言われる「1級管工事施工管理技士」の2つです。

エネルギー管理士は機械設備工事だけで無くエネルギー全般を扱う資格のため、電気的知識、化学的知識も必要なります。当時資格取得に向けて勉強を開始したきっかけは、会社から取得した方が良い資格一覧の一つに記載があり、経験年数を必要とせず机上の勉強だけで取得することが可能だったためです。

1級管工事施工管理技士は、施工管理担当になって3年目で取得しました。当時は転職を考えていませんでしたが、今後現場代理人になるために必須の資格であるため仕事が終わった後は資格取得のために毎日勉強時間を捻出していました。1級管工事施工管理技士は机上の勉強だけでは、なかなか難しく施工管理を行っていないと分からない資格のため、施工管理担当者の最低限の知識経験を問われます。

これから転職を考えている人へ

一級管工事施工管理技士は監理技術者になれることと、一級の技術者を擁していると経営事項審査の点数が上がるので、企業的に「欲しい」人材です。転職に優位に働くことは間違いないと言っていいでしょう。また、資格を持っていたら、物言わずとしてその資格に関する最低限の知識があることが証明できます。

ただ、難関資格を持っている=仕事が出来るとも限りません。資格は取得しておいた方が良いことに変わりませんが、資格をたくさん取得した後に転職するようでは時間がかかりすぎてしまいます。ある程度の年齢までは皆さんが身をもって経験したことや知識が転職には資格よりも有利であり、価値があると私は考えています。

転職活動をしてたくさん応募しても全然内定が取れずに苦戦する方がいらっしゃると思いますが、諦めずに応募と面接を繰り返していけば必ずや自分の希望する会社へ転職することができると思います。心が挫けそうになっても頑張ってください。

私はひとりで活動をしましたが、転職エージェントに任せるのはひとつ大きな手だと思います。

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